虚圏*破面

□虚圏紅蓮百景T
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*****






ドゴーン!!!



「きゃッ?!」


騒々しく自宮の入り口から
何者かがこちらに向かってくる。

土煙でなにも見えない。


「おい凛!!」


そして突然、
その者は目の前に現れた。


「グリムジョーさん!?」


「…あの野郎。

ふざけやがって!」


握り拳をかざして
凛を睨み付ける。


「えっっ。

ごめ、ごめんなさい…」


グリムジョーの勢いに
圧されて謝る凛。


そんな姿を見てバカバカしさが増した。


「ちっ!!

(こいつビビらしたってしょうがねえ)」


グリムジョーは
スキンシップでパシッと頭を叩いた。


「…ッ。

どうしたんですか…」


ギュッと閉じた目を恐る恐る開いて
様子を伺った。


「…藍染がお前を呼んでる。」


凍りつく様な表情でその名を呼んだ。


「藍染…様が?」


グリムジョーの苛立ちといい
何かの前触れに違いないと確信した。


グイッ!!


突然グリムジョーに肩を抱き寄せられた。


「ど、どうし」


スゴく力が強くて
微動だにできなかった。

きゅううって心臓が
張り詰められるみいだった。


「どいつもこいつもうるせえんだよ」


今、一体この人は
どんな顔をしているんだろうと思った。


その様子は伺えないが
辛いことでもあったんだろうか?


なにも言わずぎゅっと腰に手を回した。



******




ー虚夜宮中央広間




「グリムジョーさん…」


グリムジョーの三歩後ろを
歩いていく。


ギロっと瞳がこちらを向いた。


名前呼んだだけなのに
ピリッとした空気。


「(今日は何かある…)」


そわそわした。

パッと視線を感じたので
その方向に目をやった。


「あ。
(ウルキオラさんだ…)」


妙な緊張感があった。

藍染が腰かける高台の椅子の前で
静かに膝ま付いている。


目が合うとすぐにそっぽを向かれた。



「やあ。
よく、来てくれたね凛」


ゾクッと背筋を凍らせるような
声のトーンだった。


「お久しぶりでございます…」

ちょこっと頭を下げた。


「貴様、挨拶の仕方も知らないのか?」


それに反応したのはウルキオラだった。


ほら見ろ、
貴様に世話係りなんぞ到底出来ん。

と言わんばかりの
睨み付けをグリムジョーに送った。


「ッ!!てめえ!!」


すかさずグリムジョーがぐいっと
体を出して突っ掛かっていく。


「や、グリムジョーさん
私がいけないんです…

申し訳ありませんでした。
体が強ばりまして。」

しっかりと
地と対面する様に頭を下げた。


その姿にグリムジョーは止まる。


「なに、気にすることはない。

君はかしこいし、
本当に関心しているよ
普通の“人間”の女の子なのに。」


持ったえぶるように
怖いくらいの笑みを浮かべてる。



“この子かい?

珍しく君が推薦するなんて
よほど何かあるんだろうねウルキオラ…“


そうだ。
あの女は俺が此処へ呼んだ。


「グリムジョー。
”約束の2ヶ月“だ。」


藍染は笑顔のままそう言った。


「ちっ」

「…?」


目の前に立っていたグリムジョーは
物凄い形相で睨み付けて方向転換した。


「…?」


言葉を交わさなくとも
その真っ直ぐな瞳が何か訴えかけてた。


「グリムジョー
分かってくれるね?」


背中を向けたグリムジョーに対して
藍染はしたたかに言う。


「ああ。気に入らねえけどな」

「どうゆうことですか?」


去ろうとする
グリムジョーの手を思わず掴んだ。


「もうおめーに用ねんだよ!!」


サッと響音でその場から去った。


グサッっときた言葉だった。


「な、なんで?
なんでですか私なにかしましたか…」


涙がじわりと滲みでた。


見かねて藍染は発言する。


「宜しく頼むよウルキオラ。」


ウルキオラは頭を下げると
立ち上がって凛の方へ
愛想のない瞳で近づいてく。


「ひゃ、っ!」

「行くぞ。」


その一言で、

気づけば胴を軽々しく担がれていて
一瞬で空間が変わった。


「あーあ。
いってしもうた。

また、いじわるしてはってからに

グリムジョーは荒れるし
ウラキオラはムキになるだけやないですか」


「ギン、
そんなに僕は酷く見えるかな?

こんなことに振り回される二人が
可愛いじゃないか

まるでこどもの様だ。」


「なんや、
親目線なこと言うて…」


そんな二人もあれやこれやと
話ながら各自の自宮に帰っていった。





*****












二人の思いと一人の宝具。

始まりはもう
当に過ぎているというのに



2013,6,8更新




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