薄桜鬼

□ハジえもん
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「うわぁぁぁぁん!!ハジえも〜ん!!」

なんの変哲もないこの部屋に、今日も龍之介の泣き声がこだまする。

「どうした、龍之介。また芹沢さんに殴られたのか?」

「聞いてくれよ、ハジえもん!俺さ、そろそろ平間さんにズラのひとつでも買ってやったらいいんじゃないかって、芹沢さんに言ったんだよ」

「うんうん、うっ…ん?んん?」

「そしたらさ、あの人なんて言ったと思う?」

「な、なんて言ったんだ…?」

「あの人、お前のその無駄にもっさりな髪でも分けてやれば良いではないか、って言ったんだ!!」

「…まぁ、確かにお前は無駄にもっさりだから一理あると思うが」

「バッッッカ野郎!たかが平間に分けてやる髪なんざ俺は持ち合わせてない!」

「・・・・・で?」

今のところ、俺にはまったく話が見えてこなかった。
こんな話を聞かされてもだからなんだとしか言えない。
で?と聞き返した俺を恨めしそうに見つめながら龍之介は言った。

「だからさ、芹沢さんに仕返しをしたいんだ。なんか道具出してくれよ!ハジえもん!」

はぁ。結局それか。
俺とてそんなに暇ではないのだが。
いつもいつも困ったヤツだ。
だが、泣きすがる龍之介を捨て置くのも忍びない。
俺は仕方なくお腹のポケッ…ではなく、首元の襟巻きに手を入れた。

「沖田総司ー!」

俺は襟巻きの中から総司を取り出した。

俺の襟巻きは二次元と繋がっている。
二次元のキャラなら誰でも取り出せる仕組みになっているのだ。
四次元ポケットならぬ二次元襟巻きだ。

「ちょっと一君!僕今近藤さんと話してたんだけど!」

おっと説明はこの辺にしておこう。
総司が何やら怒っているようだ。

「すまぬ。お前に用事があったのだ」

「あぁもう何?早く済ませてくれない?」

「総司、龍之介の代わりに芹沢さんに仕返しをして来てはくれないか」

心底面倒くさいといった顔で総司が俺を見る。
だがあくまで今の総司は俺の道具だ。
そう、俺が今あんな事やこんな事をしても、この総司に逆らう権利はない。
ゲヘ、ゲヘ、ゲヘへへ何したろかなこいつゲヘヘヘヘへ…

「ちょ、ちょっと待ってくれ。沖田はどんな仕返しをしてくれるんだ?」

ふいにもっさり龍之介が口を挟んだ。

あぁ本当にうるさいヤツだ。
今からBLと書いてヴォーイズラヴの展開になるはずだったのに!こなくそ!

まぁでも仕方がない。
龍之介はいわゆるのび太の役回りだ。
ピーピーピーピーうるさいのはもうキャラなんだと納得しておこう。

「総司はあれだ、意地悪だ」

沖田総司は意地悪な笑みで意地悪を言ってくれる。
ドMには最高の道具となっている(ちなみにだが俺とか俺とか俺とかだ)。

「えっ!待ってくれ!それだけか?」

「ちょっと井吹くん、それだけってあんまりじゃない?そういう君こそ芹沢さんに殴られる為だけにいるキャラじゃない。僕の方がよっぽど…」

あぁ、どうやら龍之介に向けて意地悪が発揮されてしまったようだ。
まったく龍之介が余計なことを言うからだ!こなくそ!

「あああああ!!もういいよ!もうわかったから!他の道具はないのか?」

総司の意地悪を聞くのに嫌気が差したらしい龍之介が叫んだ。
まったく面倒なヤツだ。

「では総司はいらないのだな?」

俺が龍之介に確認すると、同時にすかさず総司が口の端を上げた。

「僕を使わないなんて井吹くんは本当見る目がないよね。僕が一番芹沢さんにダメージを与えてあげられるのにさっ」

クスクスッと笑いながら総司は俺達に背を向け歩き出した。

「あっ待て、総司!」

俺は咄嗟に総司を呼び止めていた。

「何?」

軽く振り向き総司が立ち止まる。
俺は総司を見つめながら懸命に言葉を紡いだ。

「そ、そそその、あの、なんだ、ああの、その、こ、こ、こここここ、こんっぁあああぁぁほぉおぅぅうっ、お、お、お、俺、俺、おれオレオれおれお」

「了解」

そう言って、軽く手を上げ総司はまた歩き出した。
そう、今度こそ近藤さんの元へ。

「…って、えぇぇっ!?沖田は今のでわかったのか!?」


…あぁ、本当に、うるさいもっさりだ。
 

さて、他の道具はないのかと言われた俺は仕方なくもう一度襟巻きを探っていた。
さて、誰を出すべきか…
あぁ超絶面倒くさい。
だからなんかもう手当たり次第に引っ張り出すことにした。

「原田左之助ー!」

とにかく何かと18禁な道具である。

「藤堂平助ー!」

とにかく何かと純粋な道具である。

「永倉新八ー!」

とにかく酒を与えりゃ機嫌がいい道具である。

そしてこの3人を合わせると、島原へと繰り出すのである。

「土方歳三ー!」

とにかく泣く子も黙る道具である。

「風間千景ー!」

とにかく婚活に生きる道具である。

「山崎烝ー!」

とにかく何かと畳を返す道具である。

「源さーん!」

とにかく好きなだけおかわりをさせてくれる、みんなのおじいちゃんである。

「サザエさーん!」

とにかくお魚加えたどら猫を追いかける道具である。
最後は強制じゃんけんでウフフフフ〜である。

「島田魁ー!」

ただの甘党野郎である。

「南雲薫ー!」

ただのシスコン野郎である。

「雪村綱道ー!松本良順ー!平間ー!」

みんなただの禿げである。

「近藤勇ー!」

ただのおっさんである。

「アンパンマ―ン!」

愛と勇気だけが友達ー!

「じゃじゃまるー!ピッコロー!ポーロリー!」

時々あっち向いてプンッ!
これはかなり年代がバレる番組である。(執筆者の)

「狐邑祐一ー!」

総司の次に抱かれてもいいと思える男ー!(もちろん俺が)

「もう疲れたー!あとは勝手にしろ龍之介ー!」




【終】


もはやラストを考えるのが面倒くさくなっただけ。

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