薄桜鬼

□夢の続き 〜沖田編〜
1ページ/1ページ

少しでもみなさんのお役に立てるよう、今日も私はお掃除に勤しんでいた。
吹き付ける風に髪が揺れふと顔を上げると、視線の先に少し開いたままのふすまがあることに気付いた。
あそこは確か沖田さんの部屋だ。
沖田さんは今日は非番だったはず。
お部屋にいるのだろうか、それとも閉め忘れたまま出掛けてしまったのだろうか。
掃除をしていた手を休め、私は沖田さんの部屋へと向かった。

「沖田さん?中にいますか?」

開いていた隙間からそろりと中を覗いてみると、部屋の真ん中で倒れる沖田さんが目に飛び込んだ。

「___っ!!お、沖田さんっ!沖田さんっ!?」

思わず声を上げ、沖田さんの傍まで駆け寄った。
そのまま沖田さんの肩を大きく揺すりもう一度声をかけた。

「沖田さん…っ!」

最後の一声が届いたようで、沖田さんの目がうっすらと開いた。

「…え、なに?…千鶴ちゃん?どうしたの?」

気だるそうに沖田さんが目を擦った。

……あ、あれ?
それまでの緊張がゆるゆるとほどけると同時に違和感を感じた。
もしかして、もしかして、これは寝てた、だけ??
目には涙まで浮かべてしまっていた私は恥ずかしさで一気に身体中の熱が上がった。
まともに沖田さんの顔が見れず、赤くなっているであろう顔を隠すようにそむけてもごもごと口を開いた。

「ご、ごめんなさい。私、沖田さんが倒れてるんだと思ってしまって…」

正直にそう告げると、くすりと笑う声がした。

「…あぁ、そういうこと。本当におもしろいね、君は」

そう言いながら沖田さんの手は私の顎を捕らえ、ニヤリと口の端を上げて顔を寄せてきた。
そのまま私は口付けをされてしまう。
突然のことに頭が回らず、目を閉じるヒマさえなかった。

「僕さぁ、今すっごくいい夢を見てたんだよね。君が起こさなければ、夢でいいことが出来たんだけどなぁ」

息のかかる距離に私の心臓が持たない。
間近で意地悪に微笑んだ沖田さんは、そのまま私を引き寄せてもう一度唇を重ねた。
さっきとは違う深い口付けに身体を強ばらせていた私を容易に押し倒してから、彼は静かに囁いた。

「でも、本物の君を抱く方が、やっぱりいいよね」

「えっ…」

「今、君の夢を見てたんだ。こうして君を押し倒して、さぁこれから…って時に、現実の君に起こされたわけ」

「えっ!?」

そんな夢を見られていただなんて恥ずかしくて仕方がなかった。
今のこの体勢だけでも十分恥ずかしいのに、さらなる恥ずかしさに私は身を捩った。 
沖田さんを見上げる格好のままじたばたと抵抗を試みても、それは虚しく空回り彼の一層意地悪な笑みに私の全てが蝕まれていく。

「ねぇ千鶴ちゃん、まさか僕から逃げられるなんて思ってないよね?もう観念しなよ」

「…んんっ」

重ねた唇を強引に抉じ開けて沖田さんは容易く私に侵入してきた。
押さえられた手首と、絡まる舌先に意識が集中し、あとは沖田さんの存在だけを身体中で感じた。
袴が乱れて露になった私の足を大きな手でなぞられる。

「…んっ」

「何?どうしたの?」

さらに口角を上げて沖田さんは私の隅々に触れていく。
裾から彼の手が滑り込んだ瞬間、私の反応もより一層大きなものになった。

「あっ。沖田さん、ダ…メですっ」

のしかかる厚い胸を押し返してはみたがそれはまったく効果を成さず、弱々しい女である自分を確認させられただけに至った。

「あっ。…はぁっ」

正直な身体の反応と共に、漏れ出る声が止まらない。
自分が今どんな声を上げてどんな顔をしているのかなんて、そしてそれを恥ずかしいと思う余裕なんて、もうとっくになくしてしまっていた。
ぎゅっと目を瞑り快楽に身を任せていると、ふいに私を弄ぶ沖田さんの手が止まった。

「千鶴ちゃんのこんな可愛い姿、他の奴らには見せたくないな。ねぇ、君が開けっぱなしにしたふすま、閉めてきてくれる?」

その言葉にはっとし横を向くと、さっき驚きのあまり開けっぱなしにしてしまったふすまが目に飛び込んだ。
慌てて起き上がり沖田さんの腕から逃れた私はピシャリと勢いよくふすまを閉めて、そのままその場にへなへなと座り込んだ。
あんな、あんな姿、他の隊士さん達になんて絶対に見せられるはずがない。
仮にも私は男としてここにいて、それを抜きにしても女の私がわざわざ他人に見られたい姿のわけがない。
一気に青ざめた私の顔を見て、沖田さんが声を上げて笑い出した。

「そんなに焦らなくても大丈夫。誰も来てないよ。僕がそんなヘマするはずないじゃない。乱れた君を見ていいのは僕だけ…そうでしょ?」

沖田さんの艶っぽい眼差しと甘い囁きに、私は金縛りにでもあったかのように指先すら動かせなくなった。

___あぁ、私は今から彼に抱かれる。

もう抵抗は無意味だと悟る。

「僕はもう、これ以上は我慢の限界。千鶴ちゃん、君は…?」

沖田さんの問いに、私の吐く息が乱れた。
彼が優しく私に触れて、長い髪を結っていたりぼんをほどく。
壊れ物を扱うように、火照った私の頬を優しく指先でなぞって、沖田さんは吐息混じりに口を開いた。

「可愛い君を、僕にだけは、もっと見せてくれていいんだよ…」

耳元で囁かれたその言葉に残り少ない私の理性は全て奪われて
優しく見つめる沖田さんの首に両の腕を回して、私からそっと口付けをした。



【終】

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ