薄桜鬼
□緋色の日本刀
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僕は、どれだけの人間を斬ってきたのだろう。
新選組一番組組長として、僕はただひたすらに剣を振るった。
小さなあの頃の僕を消し去るように、誰にも負けない強い僕を確かめるように。
ねぇ君は、ただの剣として生きた僕を、空っぽなヤツだと思う___?
倒れていた人物が井吹くんだと気付いた時、僕が咄嗟に知らないふりをしたのは、隣に君がいたからだよ。
僕と似た彼に、深入りしてほしくなかったんだ。
彼に深入りすることで、君の知らない僕の半生を知られてしまうことが、怖かったんだ。
君はきっとどんな僕をも愛してくれるけど、でもやっぱり少し怖くもあるんだよ。
千鶴、君を愛してるから、君を失いたくなくて、だから僕は、君に知られたくない僕を隠してしまった。
ふふ、ダメな夫だよね。
…でもごめんね、もう少しだけ時間をくれる?
いつか必ず、君には話したいから。
僕の全ては、君だけに。
だから今夜はまだ、楽しい話だけをさせてほしい。
僕の幸せだった記憶を。
近藤さんや一君、平助に左之さんに新八さん、それから山南さんや源さん、山崎くん…仕方ないから、土方さんの話もしてあげるよ。
あんまり気は進まないけどね。
ねぇ千鶴、僕はもう剣は持たない。
ただの剣だった僕が人間になれたのは__千鶴、君のおかげだね。
僕は君を守るよ。
守る術は変わるけれど…
それでいいと、今は心から思えるんだ。
何度人の血で染めたかわからない僕の剣は、もう二度と___。
(もう僕は、剣になる必要はないんだ)
(君が傍にいて、どんな僕をも愛してくれるから___)
(ずっと、ずっと愛しているよ)
【終】