年末年始2013

□宴
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21時を少し過ぎた頃。

予定通り、三宮が
屋敷に帰ってきたようだ。

少し、ダルそうにふすまの扉をあける
三宮。



「帰ったぞ」



薄くため息を吐きながら、
髪の毛をかきあげる。

顔が少し赤い。
「付き合い」である程度の酒を
摂取させられたらしい。


進藤
「お帰りなさいませ」



進藤は当たり前のように三宮
の、スーツの上着を受け取り、
押し入れの中にあるハンガーにかけた



「進藤さん、ソレ取って」



三宮はネクタイを緩めながら、
日本酒の入った徳利をさして言う。



「…………」


進藤は困ったような顔で
徳利ではなく水を注いだコップを
差し出す。


「これじゃないけど?」




三宮は
維持悪い(笑)を含みながら言った。




「すみません…、
お顔の色が優れないようなので、」

「……少しだけでも
水分を摂られた方がいいかと…」

「…ふーん。
じゃあ進藤さんが飲ませてよ。
口移しで」

「えっ…!」




三宮は進藤を引き寄せ
楽しげに囁けば。
進藤は真っ赤になって首を横にふる。

…けれど

三宮の腕の中から
逃げ出そうとはしない。



「あ…あの……っ…、……」

「何」

「……、…ほ…ほんとに……
お水……飲まれ…ますか…?」




恥ずかしそうに訪ねる進藤。
目を潤ませながら、
視線を外している。



「っはは…
進藤さん、アレ本気にしてんの」

「……っ…」

「そんなに俺とキスしたかったんだ?
…ふ…、…」



言いながら、コップの水をコクコクと
飲み下す三宮。



(あ……)



進藤はそれを見てホっとしたような
顔をした。



(………よかった)



無理をしがちな三宮を
心底心配しているらしい。



「…………」



三宮も
そんな進藤の様子に気がつき…、

……思わず進藤の顔を
見つめる………。


鈴木
「あー、凄いですね、アレ」

浅葱
「ええ、ほんとに……」


少し離れた席で三宮と進藤の
やり取りを見ていた鈴木と浅葱が、

ワイングラスを片手に会話している。



「あーんな風に転がしちゃってるん
ですねー…巧いなァ」

「進藤さんって、ああ見えて結構年上
ですもんね。
気の効かせ方が大人っていうか」

「気が利く大人なのに童顔で純情って
…もう詰め込みすぎですよ」

「絵に書いたみたいな、
典型的な男の理想型ですね」

「……アー…なんか今の、
嫉妬してるっぽいですね。
浅葱サン」

「え…?!…ち……違いますよ」

「そーですかー?」

「…す、鈴木さんだって…、」

「さっきから、お酒のペース
早いですよ。
気にしてるんじゃないですか?」

「っ……っ違います」

「今日はちょっと
仕事で色々あったからーーー」



感情の共有が出来ているらしい
二人は、どこか朗らかなテンションで
酒をあおっていた。



「あはは、鈴木さんて……、
なんか可愛いですね」

「……女子中学生みたいな
浅葱さんに言われたくないデスヨ」

「中学生って……
俺、どういうキャラですか……」

「そのまんま。
乙女ちっく、って奴です」



浅葱も鈴木も
何となく楽しい気分になり、
会話が弾んでいくー



一方。

隣の席の二人は「朗らか」には
ほど遠い、異様な熱気を放っていた。



(ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様…)

水嶋
「あの男…酔った勢いで
政春に何してやがる…!」



荒ぶる感情を隠そうともせず、
ひたすらに強い視線を送っていた。


(……俺だって……
上着、とか……お水……とか…)

(お風呂にする?食事にする?とか…
ああいう…の)

(っや、やりたかったのに……)

(…政春……、の…あんな顔…
…絶対俺には見せない、
よな……畜生)

(あぁでもマジ可愛いなクソ。
何だもう、どういう生き物だ?
アレで10歳上って、神秘の領域だろ)



御園も水嶋も、
それぞれ想い人への慕情を
馳せていた。

けれどここで不用意に彼らの前へ
飛び出せば、いずれもよき結果に
たどり着けないことは解っている。

その為ー
こうして彼らの様子を肴に、
辛い酒を摂取するしかなかった。
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