☆読み切り☆

□〜キズアト〜
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大学もバイトもない金曜日。
欲望を溜め込んだ下肢は、熱を伴いながら赤く腫れ上がり、限界を訴え続けている。触れてくれたらすぐにでも飛び立てるのに、和哉の手は近くにある陰嚢をそっと撫でるばかりで、何も与えてはくれない。焦れきった長谷川は自分から腰を揺り動かし、和哉を求める。するとそこが軽く触れ、弾けるような快感が全身を突き抜けた。
── もっと…
立てた膝の奥にある自らの下肢に向かって、知らずと手が伸びるが、行動の意図に気付いた和哉にすぐさま制された。
「こら……ダメだろ?」
たしなめる声と、取り上げられた快感に、長谷川は失望めいた嘆きを洩らす。
欲しかった刺激は、ほんの一瞬だけだが確かに得られた。しかし、そんな刹那の快感では昇りつめることは到底できず、砂の斜面に足をとられるような歯痒さが襲う。
求めるほどに、遠ざかっていく。
苦しさを訴えたくて目の前の男に縋り付くと、長谷川はその耳許で懸命に終わりをせがんだ。
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