小説(本文用)

□きっと嘘なんてない
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天候は晴天。風は穏やかに流れる平和日和。
ドクロに麦わら帽子を被せたジョリーロジャーが今日も大海原を進んでいく。

「ルフィ! 11時の方角に海賊船だ!!」

見張り台に立っていた仲間が声を上げた。
敵襲かと一瞬にして緊迫した雰囲気が立ち込める。

「相手は誰だウソップ!?」
「分かんねえ! もう少し近づいてみねえと!」

双眼鏡を覗きながらウソップは懸命に相手を探ろうとする。
相手はサニー号よりも遙かに大型の船だ。こちらに気付いているのだろう、その進路は真っ直ぐと向かっている。

「シャボンディで会ったルーキーの誰かかしら?」
「あれから二年も経っているのにまだ『新世界』の入口にいるルーキーなんているのかロビン?」
「わからないわ。」

でも私たちはそうよね、とチョッパーにクスリと笑って言った。
横で聞いていたナミも確かにその通りだと船から目を逸らさない。

「誰にせよタダ者じゃねえことは確かだ。あの船からは強烈な覇気がビシビシ伝わってくるぜ。」
「ゾロ、何人いるかわかるか?」
「…40人だな。だが妙な気配も感じるぞルフィ。それも含めると43人ってとこか。」
「ヨホホホ〜。魚人島での10万人に比べれば可愛いものです。」
「アウ! 俺様のスーパーな必殺技がまたお披露目できるってわけか!!」
「ルフィの覇気のおかげで実質5万人だったけどな。」

どうやら男たちは戦いたくて仕方のない様子だ。
チョッパーもそれなりに覚悟があるようだし、ロビンは相変わらず余裕の表情をしている。
ナミは戦いはゴメンだが敵船からお宝でも奪えればそれでよしと思っていた。
そうこうしているうちに船はハッキリとその姿を目視で確認できるまでに近づいた。

「あ! あの船…!」

ルフィは船首のサニーからはじかれたように身を起こした。
それは決して戦いに向かうものではなく、懐かしい友人にでもあったような表情だった。事実そうなのだが。

「ルフィー! 久しぶり!」
「会いたかったよー!!」

黄色い歓声は麦わら海賊団の船長へ向けてのものだ。
ルフィが二年の間世話になっていたという島の女たちがわざわざ船を出してまで会いに来たらしい。
そうして船はすぐ目の前までやってきてサニー号に横付けされた。先程までの緊迫した雰囲気は一転、皆安堵したように警戒を解いている。
海王類すらも遠ざける二匹の毒蛇が大型海賊船を轢き、その甲板には選ばれし屈強な女たちが総出で顔を揃えていた。

「お前ら!! 相変わらずだなー!? 今日はアイツはいねえのか!?」

彼女たちが不意に中央を開けるように両サイドに分かれた。

「蛇姫様! ルフィですよ!!」

誰かの言葉に一瞬空気が張り詰めるも、それには敵意は含まれていないことが見て取れる。
そしてゾロが感じていた強大な覇気の最たる人物がその姿を現した。

(あいつか…。)

黒い長い髪を風に揺らし、気品漂いながらも威圧感のあるその瞳を真っ直ぐにサニー号に、麦わらのクルーたちに向けている。

「久しぶりじゃの、皆の衆。元気そうで何よりじゃ。」

白い大蛇を背後に、その声だけで人々を魅惑する力を持つ九蛇海賊団船長。
『王下七武海』がひとり、ボア・ハンコクその人だ。彼女の美貌は既に語るに及ばず、一番分かりやすい反応を示してくれたのはサンジだ。
こういうときのサンジは大量出血騒動になるか、体の関節を疑うような踊りを踊る男だが今回は目がハートマークのまま石化した。血を流すことを許される時間もなかったようだ。

「サンジー!!」
「能力で石になったんじゃないからすぐに戻るわよチョッパー。」

元に戻そうと慌てふためくチョッパーをよそに、ナミは冷静に言い放った。
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