イナズマイレブンGO

□白竜君の気になる子。
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「…空野ーっ!」

 急に叫んだものだから、びっくりしていた。
 ''あいつ''というのは、俺がライバルと思っている、剣城で。
 サッカーなら、勝てる自信が無くは無かった。
 俺が何故こんなに消極的になってるのか。
 それは空野の剣城をみる瞳。あれは恋をしてる瞳だと、常にカメラを構えたマネージャーが言っていた。
 俺のときは、全然そんなんじゃないのに。

「…白竜さん?」
「…じゃダメなのか」
「え?」
「俺じゃダメなのか…っ?」

 いきなり何を言ってるんだろう、俺は。
 空野が困ってる。違う困らせたいんじゃない。
 
「はっ白竜さん!?」
「っ…?」

 気づくと、俺の目からは涙が流れていた。
 今まで感じた事ないような思い。胸が熱くてたまらない。
 本気で空野が好きで、泣くなんて。
 「泣く」という事に慣れておらず、俺は溢れる涙を止められない。

「うっ…な、んで…みるなっ!」

 しゃがみこみ、俯く。
 ああ、何やってんだ俺は。
 話しかけたんだろ、話そうと思ったんだろ。
 話せよ。ほら、早く。空野の顔をみて。
 話せよ…っ!

「大丈夫」

 ふわり、花の香りが俺を包む。
 肩には空野の腕が回されていて、柔らかい髪が頬に触れる。

「何があったのかよくわかりませんが、大丈夫、だと思いますよ…?」

 赤ん坊をあやすように、ぽんぽんと優しく背中を叩く。
 そんなことされては、余計に涙が出るではないか。

「〜っ! 空野…ううう〜っ!」
「どうしたんだよ…白竜…」
「白竜? いいな。葵さんに抱き締められて」
「しゅ、シュウさんっ!」
「剣城なんか嫌いだっ! あっち行けぇーっ!」
「何でだよ! 子供かよ!」

 泣く必要なんかない。
 これから俺は剣城を越えるんだ。
 今は同じラインの上にたってる。いつか俺はそこから5メートル以上離れてやる。
 俺は涙を拭いて空野の肩を掴み抱き締めた。

「? ??」
「…剣城に負けない男になるからな! 期待して待っておけ!」
「…ふふっ。はぁい」

 空野は俺の言葉で笑顔になってくれた。
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