夢小説

□放課後、部活がお休みの時。
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 1年2組の教室のドアを開くと、見慣れた人影が見えた。
 その人影は窓を見つめていた。

「音無さん。まだ残ってたの」
「ん、立向居君。まあね」

 俺は音無さんの隣の席に座り、同じように窓の外をみた。
 窓からみえる夕焼けが雷門町を照らして、とてもきれいだった。
 音無さんは冬用のカーディガンを着ていて、後ろからみたらなんだかとても大人にみえた。

「ね、立向居君は自分の事について、考えたことってある?」
「え?自分の事?」

 振り向いて、膝があたる。
 かなり近い距離なので、少しドキドキする。
 真剣に俺の目をみて、言葉を続けた。

「…私、最近恐いの」
「恐い?」
「…あの綺麗な夕焼けを見てると、なんだか、とても心細くなって、いろんな事を考えちゃうの」

 自分は必要なのだろうか、部のみんなの役にたってるのだろうか。
 そんな事を考えてしまって、恐いらしい。
 今にも泣きそうな表情に少し戸惑い、音無さんに言った。

「大丈夫だよ」
「…立向居君」
「たとえ他の人が君の事を必要としてなくても、俺は、俺には君が必要なんだ」
「……立向居君」

「俺は君がいないと生きていけない自信があるよ」

 …告白のつもりなんだけどな。
 伝わりづらかったかな?
 少し顔を俯かせていると、右耳になにかふわりとしたものが触れた。

「…え、音無さん…?」
「…今のは、告白って事でとらえていいの?」
「えっ! わかったの…?」
「…私も、あなたがいないと生きていけない自信がある」

 たとえ他の人が自分を必要としてなくても。

 俺は君がいないと生きていけない自信があるよ。


 放課後、部活がお休みの時。そんなことを言い合った。

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