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□狐疑逡巡
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よく姉に恋愛相談をされた。

今思えば、身近な人間に話を聞いて欲しかっただけなのかもしれないが。

まだ幼かった俺は頼られることが嬉しくて、読み込んだ恋愛小説やら映画から台詞を引用して、答えてみせたりした。


ある日、気になる人がいるのだと相談を持ちかけられた俺は、
女の"気になる"は、
もう"好き"なんだと、どこかの映画の台詞を伝えた。


……生意気だと殴られた。



あの時はなんて理不尽なんだと口をへの字に結んだが、
今、同じ立場になれば姉が機嫌を悪くした理由がわかる。


"気になる"という言葉は実に便利だ。

心配だ、気がかりだ、という意味でも使えるし、姉のようにも使える。


だから、多くの人々は好きになって日が浅いときに気になる、という言葉を使うのではないだろうか。
まだ、好きではない。
なりかけているだけなのだ、と。


だけれど、気になるから好きになるのではなくて、
好きになっているから、気になるのだと俺は思う。

こんなことを言い出せば堂々巡りしかしないことは、わかってはいるのだが。


しかし、そんな考えも最近は姉に近づいてきていた。
否、気になるだけだと思いたいと願うようになった。



俺は跡部が、気になる。







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