朝霧桜は百合色に

□告白
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「理可。終わったよ。」

「ありがと。」

「晩ごはんはどうする?」

「........どっか、食べに行こ........」

「やっぱり、そうだよね.........」

「正直、アタシも早織も料理はほとんど出来ない。これで夕食を作ったら、必ず何かしらの事件が起きる。」

「二人で頑張れば、何とか......」

「.........悪いけど、アタシはベニヤ板を食べ物に出来るほど、料理の腕は無いんだ。ごめん。」

「な、なによそれ!? 私の料理はベニヤ板だって言うの!?」

「ごめん、ベニヤ板は言い過ぎた。レンガにするね。」

「どっちにしたって食べ物じゃないじゃない!ひどいよ...........」

「ごめんなさい。こればっかりは冗談じゃないんだ。早織の料理は本当にアタシの手には負えないくらい酷いの。それだけはわかって。」

「ううう...........」



早織ががっくりとうつむく。



さすがにちょっと言い過ぎたな.....


でも、早織の料理が下手なのは本当のことだし.......どうしよう.......






そうだ。



「早織。こっち来て。」



「ん.........なによ......まだ文句言うの..........?」

「違う違う。いいからこっち来て。」

「.................」


早織が不機嫌そうに寄って来る。



アタシは早織を自分の前に座らせて、頭の上に手を置くと、



なでなでなで...............


早織の頭を撫で始めた。




「!? ちょ、ちょっと!」

「早織が機嫌直してくれるまで、ずっとこうやってるから。」


なでなでなでなで..........


「わ、分かったから!もう怒ってないからやめて!」

「もうちょっと撫でさせて?お願い。」

「うう.........」


なでなでなでなでなで............


「いいこいいこ..........早織が頑張ってくれて、お姉ちゃんは嬉しいよ?よしよし.........」

「.......................」



早織はずっと黙っているものの、その顔は明らかに撫でられることを嬉しがっていた。


なんだ。早織だって嬉しいんじゃない。


だったら、もっともっと撫でてやろう。


アタシは早織を引き寄せて、ぴったりと抱きつく。


ただわしわしと撫でるのではなく、マッサージをするようにゆっくりと、優しく。



早織の頭を撫でる度に、ふんわりとした甘い香りがアタシを包む。




ホントは、アタシがこうしたかっただけだったりして。

































「.........ねえ、理可..........」


早織が甘い声でアタシを呼ぶ。





「なに?」


「理可は..............私のこと.............好き?」


「.........好き、だよ。早織は?」


「.......私も、理可が大好き。」


「ありがと。」


「.............理可。」


「?」


「理可の言ってる『好き』って、なんの『好き』?」


「...........どういう意味?」


「家族としての『好き』?友達としての『好き』?それとも....................恋とか、愛とかの、『好き』?」


「早織は.........どれなのさ。」









「私は.............いちばん最後の、好き。」


「................」


「最初から、ずっと『好き』だった。理可を見たときから、ずっと私は理可のことが好きだった。」


「..................」


「自分でも、おかしいと思う.......私と理可は、女同士なのに........こんな気持ち、他の人には無いのに...........」


「..................」


「だけど、私もう無理なの。自分の気持ちが抑えられない」


「................」


「私、理可が大好き。理可を愛してる。」


「..................」


「理可は、どれなの?家族としてなの?友達としてなの?」


「...................」


「答えてよぉ............」




早織の目に涙がたまる。


アタシがなにも答えないでいると、早織は顔をうずくめてしまう。
























「早織、顔、上げて。」


「...............?」


早織が顔を上げる。
その目は涙で少し腫れていた。



アタシは早織の肩に手を置いて、




「......................!」








































早織の唇にキスをした。
















「.....................................」




甘い香りがアタシ達を包む。



なんの味もしない早織の唇は、しっとりと柔らかくて、甘かった。














頃合いを見計らって、キスを止める。


目の前に映るのは、ほんのりと上気した早織の顔。




「アタシの気持ち、伝わった?」


「...........うん...........」


「アタシはバカだから、自分の気持ちは上手く表現出来ないけど........」


「...................」


「アタシも、早織が好き。家族として、友達として、女として........好き。」


「..............お姉ちゃん..............」


「なに?」






「.........昨日の続き、しよ........」


「.........覚えてたの?」


「当たり前よ.........あんなの、忘れられるわけないじゃない........私、ずっと我慢してたんだから........」


「..........我慢してたのは、アタシも一緒だよ。」


「............お姉ちゃん..........」


「早織..............」
























アタシ達はもう一度、キスをした。

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