朝霧桜は百合色に

□勉強
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「ごちそうさまー! なんだお母さん、やれば出来るじゃん!」

「理可。そういうこと言うんだったら、明日から理可のご飯だけ作ってあげないから。」

「じょ、冗談だって冗談!もう!」

「ハハハ、そこまで言うなら今度は理可ちゃんがご飯作ってみたら?」

「いや、あの、憲一さん、それはちょっと........料理は早織に任せます。」

「え、わ、私?」

「そうか。それなら早織、明日からよろしく頼むよ。」

「............茜さん。よろしくお願い致します。」

「結局私かい!」


アハハハハ.......


笑い声が響く。





本物の家族ってこんな感じなのかな..........



けっこう、いいな..........



「それじゃ理可。勉強、始めましょうか。」

「....................」



ダッ!!

ガシッ!


「あら理可、どこ行くの?」

「ちょ、ちょっとお風呂に入って来ようかな〜なんて.......」

「逃げるな。 早織ちゃん。この馬鹿にみっちり教えてやって頂戴ね。」

「分かりました。理可、行くわよ。」

「憲一さぁぁぁん!!たすけてぇぇぇ!!」

「だ、ダメだよ理可ちゃん。
ちゃんと勉強しないと。」

「ひ、ひとでなしぃ〜..........」














「それじゃ、始めるわよ。」

「うう........」

「いい加減観念しなさい。」

「早織、なんか最初の頃と性格違うよ...........」

「そんなのはどうでも良いの。
ほら、ノートと教科書出して。」

「........どっちも学校です。」

「..........なんで。」

「家で勉強しないも〜ん.......」

「家で『も』でしょ。仕方ない、今日は.........」


よし! 今日は無しだ!


「今日は数学のワークを一問ずつ解いていくわよ。」





..........ま、大体想像ついてたけどね............



「とりあえず、答えは私のノートに書いて。」

「なんで?ワークに書けばいいじゃない。」

「ワークに書いたら次やるとき答えが分かっちゃうでしょ!」

「う、うん.........」

「じゃあ、この問1から。」

「は〜い。」



アタシは問1の問題文を読む。
と言っても、問1はただの計算だけどね。

これくらいならアタシだって出来る。





「出来たよ。」

「ん、見せて.............
うん。全部あってるわね。」

「.............え?」

「なに?」

「今........解答見てないじゃん。」

「ちょっと検算すれば分かるわよ。次、問2。」

「う、うん。」


検算ってなんだ........?


















「うーん...........早織。ここちょっとわかんない。」

「ここ?ここはね.........」



早織の授業が始まってから30分。

その間、アタシはずっと数学の問題を解いていた。

正直ここまで濃密に勉強したのは久しぶり。

全然出来ないと思っていた数学だけど、早織の解説を聞きながらやれば、意外にすんなり解けていく。

答えが合っていた時のあの快感は長らく味わっていなかったな。

こんな感じで進めば勉強もあんまりキライじゃないんだけどな.....


「それでね?この式をここに代入して.........」



早織がグラフに数字を書き込む。


数字が少し小さくてよく見えなかったアタシは、体を早織の方に近づけた。






フワッ.........







...........ん?  なに、この香り。




高級なフルーツのようなほんのり甘い香り。



この匂い.......早織かな?


でも、早織が香水使うとは思えない。


それにここまで近づかないと気付かない香水なんて意味ないし......


ってことは、この匂い.......













早織の.......体臭?




ふんわりと甘いその香りが、とても人間の体臭とは思えない。



だけど、その可能性が一番しっくりくる。




それに、早織はかなり可愛いから、体臭だって臭くないかも......








いい香り..............









「理可。聞いてるの?」

「あ、うん!聞いてるよ!」

「じゃあ、この問題、私が言ったやり方で解いてみて。」

「........分かりません。」

「............もう一度、最初から説明するね。」

「ごめんなさい..........」

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