朝霧桜は百合色に

□馴れ初め
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で、その翌日。


の昼休み。




アタシは少しでも気まずさを無くすため、早織ちゃんのクラスを訪れていた。


「確か、早織ちゃんは9組.........
あ、あった。」


目的の教室を見つけ、廊下側に座っていた女の子に話しかける。



「ねえねえ、ちょっと。」

「ん、なに?」

「このクラスに瀬戸 早織って子、いるよね?」

「いるよ。呼んでこようか?」

「うん。お願い。」



アタシが頼むと、女の子はクラスの隅にいた早織ちゃんを呼びに走っていった。


やがて、ぎこちなさそうに早織ちゃんがこっちに向かってくる。




「な.........何ですか?」

「と、とりあえず、ここじゃなんだし、人がいない所にいこうよ。」

「そ、そうですよね....行きましょうか......」









頬に流れる風が、心地いい。




アタシ達は人目を避けるため、学校の屋上に来ていた。


ずっと押し黙っていた早織ちゃんが、ようやく口を開く。



「.........それで、何の用ですか?」

「いいよ、敬語なんて。同い年なんだし。」

「そ、そう。分かった。」

早織ちゃんーーーーー私もちゃんなんて付けるのはやめるかーーーーー早織が申し訳無さそうに頷く。


オドオドしたその姿は、いかにも『あなたとは上手くいかない』って感じの、灰色のオーラを出していた。


そりゃそうだよね...........ほとんど話した事も無い赤の他人が、いきなり自分の家族になるって言うんだから、誰だって緊張する。




でも、そんな感じで警戒されたら、アタシだってやりにくいんだけどなぁ.......



アタシは困って、早織の顔から視線を下にずらす。


そこに目についたのは、人並みをはるかに越えたサイズのおっぱい。


制服で圧迫されているのか、昨日よりは若干小さいが、それでも
アタシには遠く及ばない大きさを備えたそれが、激しく自己主張をしていた。







...........まずい、このまま見ていると殺意が芽生えて来てしまう。


慌ててアタシは視線を元に戻す。




「あ、あの.......どうしたの?ずっと黙ってて.......」

「い、いや!なんでも、ない、よ......」

「それじゃ、どうしたの?」

まずい。ここに呼んだのはアタシなんだし、何か話さなきゃ。


え〜っと、え〜っと.........



「あ、あのさ!」

「なに?」



「さ、早織って、おっぱい大きいね.......?」























五秒前の自分を殺したい。

死ね。アタシ。









「あ......え〜と.......その........あ、ありがとう。」

「ごごごごごめんっ!今のはなんでもないのっ!忘れて!
というか頼むから忘れて下さいお願いします」

「う、うん..........いいけど......
結局何の用なの?」

「えっと、あの、さ、早織!」 

「なに?」

「その、さ.......アタシ達は、これから、その............姉妹に、なるわけじゃん?」

「う、うん。」

「だ、だからさ。その前に、ちょっとでもいいから、仲良くなっておこうかな、って、思ってさ.......」

「う、うん.....」

「ここに呼んだのは、そういう事。分かった?」

「わ、分かった。」
















はい沈黙。


というか、アタシと早織に仲良く話し合える話題ってあるのかな?


いくら考えても話題が思いつきそうにない.......


「さ、早織?」

「なに?」

「早織って普段TVとか、見るの?」

「..........あんまり、見ない........」

「それじゃ、好きなアーティストとかは?」

「.......いない、かな.......」




ほら見ろ。アタシの想像通りだ。

いや、アタシだってそこまでTV見たり、音楽聞いたりする方じゃ無いんだけど......



きっとこの子、家では勉強とか、読書とかしかやらないんだろうな.........



あ、もしかして。


「ねえねえ、早織。」

「なに?」

「もしかしてさ、早織ってヴァイオリン持ってる?」

「..........持ってる、けど........」

「やっぱり。早織ってそういう高貴な感じ、するからなぁ。」

「そ、そう........」








えーと、あと他に何か..........!



「憲一さんって、優しそうだよね。家でもあんな感じなの?」

「まあ、ちょっとぐーたらだけど、あんまり変わらないかな。」

「良かった。憲一さんとなら、上手くやっていけそう」

「そう。」

「それに比べて、うちのお母さんと来たら!外じゃあんなんだけど、家じゃ『私は仕事で疲れてるから〜』とか言って、なーんにもしないのよ!ひどくない!?」

「クスッ だけど、それだけ外で頑張ってくれてるって事でしょ?」

「そりゃそうだけど、洗濯物くらい自分のものは自分で畳めっつーの!
早織、残念だけどうちの母親は家事は全く役にたたないからね。
悪いけど自分の洗濯物は自分で畳んで下さい。」

「フフッ、洗濯物だけで良いの?」

「いや、そんなことはありません!掃除、料理、その他もろもろお願いします!」

「はいはい、分かりました。」


早織がクスクスと笑う。



なんとか打ち解けたみたい。





「あ、ところでさ。」

「なに、早織?」

「え〜っと、あの.......」

「?」











「お、お姉ちゃんって、呼んだ方がいいのかな.........?」


「!? お、お姉ちゃん!?」

「う、うん。だって、理可のほうが誕生日、早いんでしょ?
それなら、私が妹だから.......」

「お、おね、お姉ちゃん.........」
カアアアアアア

「?」

「い、良い良い!別に良い!」

「良いの?」

「べ、別に本物の姉妹じゃないんだから、お姉ちゃんなんて呼ばなくて良いよ!」

「う、うん、分かった。」

「ア、アタシ次移動教室だから、もういくね!それじゃ!」

「じゃ、じゃあね。」


タッタッタッタッタッ........



















「な、なんで?」










「なんでアタシ、こんな興奮してるの........?」

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