story
□恋愛小説作家の恋文
2ページ/8ページ
沖田の書いている恋愛小説は友達との賭けに負けた罰ゲームで書かされ、友達に見せたところ「お前才能あるよ。応募でもしてみれば?」と言われたので、遊び半分に応募したらあっさり入選したのが切っ掛けだった。
その時は高校3年生だったため個人のことは何も公開せず執筆活動を続けていた。
仕事に不満もあったものの、本の売り上げは好調。給料も良かったため、給料目的で続けていた。
しかし、今まであまり恋愛というものを意識してこなかった沖田は自分の作品に限界も感じていた。
やはり経験があるとないのとでは差が出てしまう。どうしても作り物めいてしまうのだ。
そこで土方が時折見せる気遣わしげな眼差しや「頑張ったな」と褒めてくれる時に湧き上がる何とも言えない感情を小説に入れ込んでみたところ、これが大当たり。
口コミサイトでは『甘酸っぱい!』『今までも良かったけど、今回は今までにない切なさとか苦味があってつられて百面相しちゃう!』などの好評が羅列されていた。
そしてそんなコメントを見て初めて自分は土方が好きなんだと認めた。認めざるをえなかった。
既にこの時には土方と出会って3ヶ月が経過していた。
それからはとにかく自分の体験した気持ちを小説に入れ込むようになった。
途中土方に「書き方変えた?」と聞かれたが「よくわかんねェけど、そうなったんでィ」と答えれば「ふーん」とさして興味もなさげな返事を返された。
土方は原稿がしっかりと上げればそれ以外はさして問題ではないのだ。前にSM路線に持っていこうとしたときはさすがに止められたが。
次々と作品を上げていくにつれてどんどん強くなる自分の気持ちはもう抑えられないところまできていた。