story

□キスの雨が降る夜に
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俺は玄関に向かうふりをして自室に向かった。何故か無性に独りになりたかった。胸の辺りがもやもやして気持ち悪い。どうしてしまったというのだろう。
俺は敷きっぱなしの布団にダイブした。もぞもぞと布団に潜り頭から布団を被る。

確か前にもこんなことがあった。あの時は、姉が土方と縁側で楽しそうに何かを話していて、俺は今まで見たことないほど嬉しそうに笑う姉と、きっとその原因を作っているであろう土方も僅かに頬を染めていて…。姉をあんなに嬉しそうに笑わせられる土方が酷く憎くて、悔しくて…。
それを見ていたら胸がもやもやして、俺はその場を走って逃げたんだっけ。
その後は…、そう、不貞腐れて寝たんだ。そして、起きた時にはもう胸のもやもやは治まっていた。
結局、その時はもやもやの原因はなんだか分からず、今では土方への幼いながらも嫉妬だったと思っている。

にしても、だ。俺の思考は、相変わらず小さい時から変わっていないらしい。あまりの成長のなさに小さく苦笑した。

そんなことを考えていると、次第に思考が働かなくなり、瞼が重くなる。
俺は静かに意識を手放した。
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