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□悪態の裏の甘い意味
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俺と総悟が付き合って早数年経った今日この頃。
相変わらず総悟は仕事をサボり、俺の仕事は溜まってゆく。

「死ね土方コノヤロー」
「部屋にきて早々なんだよ」

総悟の悪態も相変わらずだ。

「あの書類はなんですかいッ!!」
「あ?何の事だ?」
「とぼけんな!俺の机の上にある大量の書類はなんだって聞いてんでさァ!!」
「あぁ、あれか。なんだって…お前の書類だろ?」

怒り狂う沖田に土方は煩いと言わんばかりに顔をしかめ自分の書類を片付ける。

「俺は書類を部屋に持ち込んだ覚えはありやせん」
「俺が置いた」
「なんで!!」

土方は一息つくと苦い顔つきで沖田に向き合う。

「お前、書類の内容見たか?」
「あんなもん見るわけないだろィ」
「全部お前の始末書だよ。てめぇ、毎回のように俺の書類に混ぜやがって」
「だって面倒臭いもん」

怒りに青筋を浮かべた土方とは真逆に、沖田は涼しげな顔でさらりと言い返す。

「面倒臭いとは何だ、面倒臭いとは!大体お前は――…」
「あー、はいはい。全く、土方さんは冗談が通じなくていけねぇや」
「お前は冗談の意味を辞書で調べてこい」

はぁ、と重苦しい溜め息をつき、土方はポケットから新しい煙草を出し火をつける。

「何でお前はいつも俺を困らせることしかしないかね…。そんなに俺が嫌いか?」
「それは…」

付き合っているからそんなはずはないと分かりながらも口にした言葉に、沖田は予想通りに言葉を詰まらせた。
付き合いが長い分、沖田についてはよく分かっていた土方だが、付き合ってから分かったこともある。

「俺を困らせれば構って貰えるから…?」
「っ……」

いつになっても言葉の続きを言おうとしない総悟の代わりに付け足してやると、総悟は分かりやすく顔を紅潮させた。

「死ね、土方」

やっと口にした言葉はまたしても悪態。
しかし土方は知っている。この愛しい恋人から発せられる悪態には裏の意味があることを。
これも付き合ってから分かったことのひとつだ。

「お前なんか大っ嫌いでさァ」
「あぁ、知ってる」

言っている事とは反対に顔をますます紅潮させる恋人を土方は優しい笑みで抱き寄せる。

「ちょっ、離せ土方コノヤロー!!触んなッ!!」
「はいはい」

耳まで真っ赤に染めじたばたと暴れる恋人を優しく撫でながら抱き締めていると、次第に沖田も抵抗を止めた。
そんな沖田に土方は再び笑みをこぼす。

「あんたなんか嫌いでさァ」
「あぁ、知ってる」

大人しく胸板に顔をうめながら呟いた相手に言葉とは真逆の感情が伝わってきて微笑んだ。
沖田の悪態は照れ隠し。これは中々素直になれない沖田なりの表現だと土方は思っている。
これはこれで、沖田らしくていい。
でもいつかは素直な感情を言わせようと心に誓い、土方は静かに口づけを落とした。
 

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