story

□俺の想いは誰のもの?(沖田視点)
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「明日は何しよっかなぁ」
何気無く呟いた一言。勿論、言うまでもなく土方への嫌がらせを考えているのだが、どうすればより嫌がる顔を見れるか日々考え込んでいる。
そんなことを考えてる暇があるなら仕事をしろ!と土方は言うが、沖田にとっては仕事なんかよりこっちの方がよっぽど重要だ。


「ったく、あの野郎調子に乗りやがって…」
布団に横になり、ぶつぶつと文句を言いながらまだ痛む腰を擦る。さっき書類に落書きをしようとしたら案の定見つかってしまいたっぷりお仕置きを受けてきたところだ。体で。


「すぐに発情しやがって…」
拗ね気味に文句を垂れながらつい先程の行為を思い出し、赤く頬を染める。
いつもはヘタレのくせに情事の時はまるで人が変わったように積極的になる。甘い言葉を繰り返し、自分を求めてくる飢えた獣のような目は沖田は嫌いではなかった。むしろ好ましくさえ思う。

再び耳元で囁かれた気がして、顔に熱が集中する。邪念を振り払うように首を左右に振ってからまた嫌がらせへ思考をシフトさせた。
ここまでされたからにはそれそうの仕返しをしなければ気が済まない。


「やっぱりバズーカ浴びせやすか…」
部屋の隅に立て掛けてあるバズーカに目を移す。一番単純な考えだったが、これが一番効果がでかい…というか、破壊力がでかい。ただバズーカを打つだけもつまらないので、一番迷惑であろう朝一に実行することにした。

ふと、時計を見ると11時を回っている。そろそろ寝ないと明日朝一で土方に嫌がらせをする計画が台無しになってしまう。
布団をかけ直し仰向けになり、バズーカで丸焦げになった副長室や土方を想像して不敵な笑みを浮かべる。


「明日が楽しみですねェ…」
そう呟き、その日は眠りに堕ちた。



次の日、淡い朝日の光に目を覚ます。まだ昨日の疲れの抜けず気だるい体を渋々起こす。


「ん゙ー…」
大きく伸びをしてから布団から出た。寝巻きを脱ぎ、タンスから隊服を取り出し慣れた手つきで着替える。
外では雀がチュンチュンと鳴いている。今日は晴れのようだ。

着替えを終え部屋の障子を開ける。廊下に出ると、眩しい陽射しに目を細めた。空は予想通り晴れ渡っていた。夏だというのに早朝だからか風が爽やかで心地がよい。
暫しこの空間を満喫してから顔を洗いに洗面所に向かう。

廊下がわずかにひんやりと冷たい感触が気持ちよく、早くも廊下に寝転がりたい気持ちを抑え何とか洗面所に辿り着く。
これまた冷たい水で顔を洗い、すっきりとした気持ちでかけてあったタオルで顔を拭う。


「よし…」
短い声と共にはっきりとした意識を引き締め踵を返す。


目指すは副長室。



副長室の前に辿り着けば息を潜める。ここで勘づかれてしまっては頑張って早起きした意味がない。
気配を圧し殺し、物音をたてないようにに障子を開ける。そっと中を覗きこむと、静かに寝息をたてている土方が目に入った。

足音を潜め中に入り、寝ている土方の隣に腰を下ろした。改めて見ると、なるほど、世間の女が騒ぐのも納得出来るほど綺麗に整った形をしている。
思わず見惚れていると、ふと、自分が副長室へやって来た理由を思い出しはっとした。こんなことをしている暇はない。が、何故か沖田は土方から目が離せずにいた。

俺は昨日、こいつに抱かれた。この切れ長い目がしっかりと俺を見据え飢えきった色で俺を求め、この綺麗な形をした唇が何度も俺の名を呼び、そしてこのしっかりと筋肉のついた腕が俺を強く抱き締めた。
体全体で自分を求めてくれるあの時が、沖田はたまらなく好きだった。

そんなことを思い出していたら急に土方が愛しくなって尚更目が離せなくなった。

しかし、このままではいつまで経っても土方に仕返しが出来ない。何よりこのまま土方が起きてしまえば仕返しもなにもなくなってしまう。


「はぁ…」
ため息をひとつつき、額にキスを落とす。今はこれで我慢しよう。

立ち上がり、起こさないように部屋を出る。

さぁ、楽しい時間の幕開けだ。




靴を履き庭に出た沖田は副長室の前ににやって来た。
じゃりじゃりと足で小石を蹴り足場を整える。無意識に狙いは標的よりも少し上を向く。下手して当たってしまったら困る。この理由はすぐにわかったが、認めたくなかった。首を左右に振り再び構え直す。

6時まであと5秒。4…3…2…1…チュドーーン!!
6時ぴったりに沖田はバズーカを発射させた。
そして、少ししてずっと聞きたかった、ずっと待っていた声が屯所中に響き渡る。


「総悟ォォオ!!」
あの人が俺を呼んでいる。正確には叫んでいるのだが、沖田にはそう聞こえた。


「なんですかィ、土方さんこんな朝っぱらから怒鳴ったりして」
と、高まる気持ちを抑えだるそうに返事をしながら靴を脱ぎ副長室に上がる。ホントは靴を履いたまま上がってやろうと思ったが、説教が長くなるので止めた。


「なんですかィ、じゃねぇだろ!!それはこっちの台詞だ!!朝っぱらから人の部屋にバズーカ射ちやがって、何のつもりだ!!」
こいつは今、俺を見ている。こいつは今、俺に向けた言葉を発し、俺のことを考え、俺に向かって怒っている。
それだけで満足だった。

沖田が土方に毎日嫌がらせをする理由。それは毎度のように言っている、土方が気にくわない。というのは建前で、追い付きたくても追い付けない事へのもどかしさと、自分だけを見て欲しいという願望からなっている事に沖田はまだ気づいていない。否、気づいていても、気づかないふりをしている。
気づいてしまったら取り返しが付かない事になる、と何処かでそう思う自分がいるからだ。


この後、何度か戯れ言を交わし、土方に愛を囁かれる訳だが、沖田はそんな愛の言葉なんてあってないようなものだった。
そんなものなくても土方の行動ひとつひとつから自分をどれだけ好きかありありと分かる。それはきっとずっと土方を見てきたからこそ分かること。
それは同等に土方にも分かるようで、微笑まれた。

何故かさっきの愛の言葉よりも恥ずかしい事を言われた気がしてそっぽを向く。

今はまだ気恥ずかしくて口に出しては言えないけど、静かに心の中で呟く。
さて、土方はこの想いに気づくことが出来るだろうか?

――俺の想いは貴方だけのもの――

どうやら土方は気づいたようだ。沖田は静かに抱き締められた。







―――――――――
何故か沖田ver.の方が長くなりましたね…。いや、わざとじゃないんですよ?たまたま…。
きっと実力が上がったんでしょう。
…すみません、妄想が爆発しただけですOrz
ここまで読んでくれた方、長々とありがとうございました!!
 

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