星屑置き場
□桃色の薔薇の花言葉2
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「どう?その薔薇、わたしが育てたのよ」
花弁をつまみ上げ見つめるイヴに、メアリーは笑いかける。
「どうしてピンクなの?赤とか黄色とか、青でもなくて?」
イヴは首をかしげた。
メアリーは赤色と青色が大好きだから。もし育てるとしたなら、その色にするのではないか。
対して、得意そうにメアリーは言う。
「だって、感謝がしたかったから」
「感謝?」
「そう。イヴ、ピンクの薔薇の花言葉、知ってる?」
「知らないよ」
イヴは首を振った。
横で、なにやら思案していたギャリーが口を挟む。
「"上品""しとやか""美しい少女""気品"とかじゃないかしら?」
「うん、そうだけどね。"感謝"っていうのもあるの」
「それは―――――」
ダークピンクの花言葉よ、と言おうとしたギャリーは、寸でのところで言葉を飲み込んだ。
明らかに蛇足でしかない。
メアリーは、感謝の為に桃色の薔薇を咲かせたと言った。
その彼女の努力にケチを付けるつもりはない。
大体花束を贈ること自体に感謝の意味があるのだから、結果オーライなのだ。
「わたしね」
メアリーはもじもじと目を伏せた。
「イヴとギャリーに言いたいことがあって。あのね、友達になってくれてありがとう。それから、酷いことしちゃってごめんなさい」
イヴとギャリーはまず、言葉を失った。
構わずメアリーは言葉を続ける。
「友達に、パレットナイフ突き立てるのは、良くないよね。沢山、恐がらせちゃったよね。でも、わたし、ごめんねって言えなかった。友達は、ごめんなさいをして仲直りをするんでしょう?わたしは、それを知らなかった」
イヴとギャリーの知るメアリーと、目の前ではにかむメアリーとでは、大幅に違っていた。
成長していたのだ。
見た目こそ昔と変わらない幼い姿だったが。
心が、明らかに成長していた。
かつてのメアリーは、もっと危うい、赤子の如く何も知らない「絵」だったのである。
人を傷つけることの意味、命の価値すらよくわかっていない。
ただ純粋で、率直で、それゆえに狂った存在だった。
だからこそ、イヴとギャリーは驚いていた。
ただの絵であったメアリーが、如何にして人間の基準を知り、善悪を学んだのか。
二人には全く想像できなかったのだ。
「わたし、独りになって沢山考えたの。わたしは人では無かったから、人であるイヴとギャリーの二人とでは余りにも心の形が違いすぎたのよ。
わたしはもっとイヴとギャリーを信じるべきだったわ。沢山お話をして、あの世界のことも、私のこともわかってもらって、三人で脱出する方法を考えて。
二人となら…………できたもの。きっと」
「メアリー………」
「だから、ごめんなさい。ねぇ、わたしと仲直りしてくれる?」