星屑置き場
□桃色の薔薇の花言葉2
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白く白く。
キャンバスは光を吐き出し続ける。
それが輝く中、なおピンクはキャンバスを侵食していた。
「しかし、まさかまた、こんな怪奇現象に立ち合えるなんて思ってもみなかったわ。ゲルテナの美術館を出たあと、もうあんな体験は二度としないと思っていたのに」
ギャリーはキャンバスを見つめたまま、あはは、と力なく笑っている。
キャンバスは見ていてもどこか虚ろで、笑顔は引きつっていた。
その真横で、イヴは真顔のままだった。
「あ………ギャリー」
「なに?」
「メアリーが動いてる」
「え?」
イヴに言われて、ギャリーはキャンバスに注目した。
白い光のした。美しい笑顔を浮かべる金髪の少女の影がゆらゆら震えていた。
水面に波紋が走り水が揺らぐように形を自在に変えている。
「ぎゃーーーーーっ!」
正にホラーなその状況に、ギャリーが堪らず悲鳴を上げた。
平常から怖がりな彼には、いくら怪奇の大元が愛するイヴの描いた物だったとしても、恐ろしく思うものなのだろう。
「ああ」
ギャリーの悲鳴など気にも止めず、イヴは気の抜けたような呟きを漏らした。
「メアリー!」
するり。
布が擦れる音がした。
光の中から、陽に透ける金色の長い髪がこぼれ落ちる。
白い肌。青いスカーフ。緑色の上品なドレス。
空と同じ色の、青い瞳。
メアリーが、ふわっと飛び出してきた。
彼女を追いかけるように、絵の中から大量の薔薇の花弁が舞い落ちた。
その花弁は、全てピンク色だった。