星屑置き場
□青い薔薇の花言葉2
1ページ/4ページ
「イヴ」
ある日ギャリーは、自宅の白いソファーに座って、イヴを見上げていた。
ソファーの手前にある木製のテーブルを挟んで、イヴはギャリーを見下ろす。
「なにかしら、ギャリー」
「イヴは前にアタシのことを、青い薔薇だって言ったわよね」
緑色のマグを手で包んで、どこか懐かしそうにギャリーはそういった。
「そうね、言ったわ」
遠くない過去に断言した記憶があったから。
イヴは真っ直ぐギャリーを見つめ、頷き答える。
この世界には存在しないはずの、青い薔薇。
その儚さを、美しさを、ギャリーは持っている。
「イヴは、アタシ自身が奇跡を呼ぶ薔薇だって、そう言ってくれたわ。実際そんな大それた人間じゃなくて、ただのオッサンなのに」
「そんなことない」
苦笑しながら卑下するギャリーに、ただイヴはかぶりをふった。
イヴにとって、ギャリーは昔から変わらない頼れる人だったから。
確かに、イヴはギャリーを青色の薔薇だと思っている。
「青色の薔薇の花言葉。"不可能"か"夢叶う"か。イヴはどちらだと思う?」
対極の花言葉を持っている青い薔薇。
そりゃ勿論、"夢叶う"の方が素敵だけど。
イヴには、わからなかった。
「あのさ、イヴ。アタシね、ある人に、プロポーズしようと思うの」
イヴがギャリーの問いに答えず、静寂が続き。
やがてギャリーは静かにそう告げた。
重大な決意を語るその彼の顔は穏やかで。
「そう、なの」
イヴは、そう答えるしかなかった。