藤咲 瑞貴
□ぼくときみのように
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一週間前―。
「ねえ真知子?聞いてる真知子?」
「あ?あれ瑞貴?…あそうか、うん、いいよ来て」
そうかって…
ベッドで組み敷かれてるのに、大事なところでうわの空って…きみって本当に…
「…もう寝る」
ぼくはきみに背を向けて布団にもぐった。
「えっ?え!…ヤだ瑞貴、ごめん、ごめんって!こっち向いてよ、ねー瑞貴っ!」
きみはぼくの肩を掴んで必死に揺するけど、今のはきみが悪い。ぼくだけ夢中なんて不公平だ。
「ごめんって言ってるのに…こっち向いてくれないなら…こうだ!」
きみはするっと、腕を伸ばしてきた。
「なっ!どこ触ってんの?!」
きみが変なとこ触るから、思いっきり振り返っちゃったじゃない。
「みずきーっ!」
きみは泣きそうな顔でぼくに抱きつくと、まるで子犬のように頬をぐりぐり擦りよせ、何度も何度もごめんね、と言った。
「最中にぼんやりしてるなんて、本当最低…ごめんね、瑞貴大好きよ?信じてお願い!」
それは信じてるけど…カマかけてみようかな。
「今回はどんな仕事なの?」
「…食品のキャッチコピーとその広告絵コンテ」
ほらやっぱり。仕事のこと考えてた。それ、きみの得意分野だし。
ぼくはきみの髪をゆっくり撫でながら続ける。
「締め切りはいつなの?」
「社内レビューは明日、コンペは明後日、発売は来週。もともと予定してたデザインにパクリが発覚したらしくって。でもメーカーは発売日をずらしたくないんだって」
それなら、ますます頭から離れないね。