怪盗SP

□エピソード1
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…・エピソード1・…


「遅番っつても、今日のマルタイの公務17時までだから、早く上がれるっすね」

ドアを挟んで反対側から、今日の相棒が話しかけてくる。

「早く上がったって、お前この後稽古だろ?大変だよな〜」

オレは姿勢を変えず、正面に向かったまま応える。

「そうっすね…オリンピックの選考試合が近いもんで…」

あ、そっか。

憲太が、こいつ来週の土日は試合で休みとか言ってたな。

「久々に見に行こうかな」

「えっ!?」

すげー驚いたトーンの反応だな。

「何驚いてるんだよ〜、子供の頃、一緒に道場に通った仲じゃない」

「だってそらさん、男同士で組んず解れずの何が楽しいんだって言って辞めてから、全然見にも来なくなったじゃないですか、おかげで…」

「優香も見に来なくなったってか?」

「…」

ようやくやつの方を向いて返してみたら、照れ隠しか右手で口を押さえた。

いつの間にか身についた、大人の男らしい癖だよね。

手も手首も、骨がしっかりしてるのが見てわかる。

兄ちゃんとはまた違った、がっしりした体付き、筋肉と骨のバランスが良いんだ。

好きな女の子も断(た)って、

稽古して、

精進重ねてるもんな。

えらいよ、海司は。



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