怪盗SP
□エピソード1
1ページ/7ページ
…・エピソード1・…
「遅番っつても、今日のマルタイの公務17時までだから、早く上がれるっすね」
ドアを挟んで反対側から、今日の相棒が話しかけてくる。
「早く上がったって、お前この後稽古だろ?大変だよな〜」
オレは姿勢を変えず、正面に向かったまま応える。
「そうっすね…オリンピックの選考試合が近いもんで…」
あ、そっか。
憲太が、こいつ来週の土日は試合で休みとか言ってたな。
「久々に見に行こうかな」
「えっ!?」
すげー驚いたトーンの反応だな。
「何驚いてるんだよ〜、子供の頃、一緒に道場に通った仲じゃない」
「だってそらさん、男同士で組んず解れずの何が楽しいんだって言って辞めてから、全然見にも来なくなったじゃないですか、おかげで…」
「優香も見に来なくなったってか?」
「…」
ようやくやつの方を向いて返してみたら、照れ隠しか右手で口を押さえた。
いつの間にか身についた、大人の男らしい癖だよね。
手も手首も、骨がしっかりしてるのが見てわかる。
兄ちゃんとはまた違った、がっしりした体付き、筋肉と骨のバランスが良いんだ。
好きな女の子も断(た)って、
稽古して、
精進重ねてるもんな。
えらいよ、海司は。