怪盗SP

□プロローグ
1ページ/5ページ




「これどうかな」

「えっ!こっちのほうが断然可愛いって」

「えーっ…じゃあぁ、こうで、こうで、こうならどうだろ?」

「やんっかわいいっ!これこれ!そらちゃん、これが可愛いよ!次の社販の時、絶対おさえとくねっ」

ファッション誌を服の形にそって切り抜く。

その切り抜きを、着せ替えのようにして、トップスやボトムを幾度も重ねる。

こうやって決めた、お洒落な組み合わせを、スクラップブックに、貼っていく。

妹の部屋で、二人して床にうつぶせながら、一番良いのコーディネートを考える。

オレの、遅番前夜のお楽しみ。

「優香(ゆうか)ちゃん、寝なくて大丈夫?オレは、明日遅番だからまだいいけど」

「やだー。まだ寝ないっ!久々にそらちゃんに会えたのに、もうちょっと一緒に起きてるっ」

頬をぷくっと膨らませ、オレの部屋着の袖口を掴むと、甘えた声でこう言うんだ。

すっかり成人の女性なのに、オレの前ではいつでも女の子だ。

だから、優香の頭に優しく手を置いてこう諭す。

「ショップで一番可愛くて、売り上げ好調の販売員サン。夜更かしはお肌の大敵ですよ」

「だってぇ…」

「明日遅番だって言ったでしょ?朝ご飯、一緒に食べられるから、ね?」

「んー…わかった」

渋々了承したな?
唇が尖ってる。

吸い付きたくなっちゃう気持ちを抑え、

「いい子だね〜」

と、目一杯の情感をこめて、よしよしと髪なでる。


「わかったから、そらちゃんも私のお願い1個聞いてくれる?」

「お願い?なに?」

珍しいな、なんだろう。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ