短編
□手足のない恋人なら愛せます
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「いい加減吐いたらどうなんだね」
水浸しで肌に張り付く艶やかな黒髪をすいてやりながら彼女を見ると、昼夜休む事なく行われた地獄の様な拷問の後にも関わらずその瞳は獣の様にらんらんと光っていた。
「ほらこんなに真っ赤に腕が腫れ上がってしまったじゃないか」
それ以前にすでに生々しく剥がされた爪の跡に血が溜まっているが。
「奴の居場所だけ言ってくれればいいんだ、」
そうすればキミを楽にしてあげよう。と言った私の言葉に彼女は口角を吊りあげた。
変わらずらんらんと光る瞳に言わずもがな、答えがわかった。
それでいい、それでこそ私の愛した女だ
「腕を切り落とせ」
手足のない恋人ならば愛せます
(ひとりじゃ何処へもいけないだろう?)