ラグナロクオンライン

□暗殺の影響
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翌朝。



「おねにーさま。おはよー」



「お早うセレッサ」



まだ眠たげな眼をこすりつつ、周囲を見回すセレッサ。

同居人が一人居ない事に気付く。



「・・・あれぇ? あねさまはぁ?」



「ネーデルリーゼならお仕事しに行ったわよ」



「もう行っちゃったの? 朝ごはんには戻ってくる?」



「どうかしらねぇ。

あの子、かなり気合入ってたみたいだから・・・もしかしたらお昼回るかもしれないわね」



明け頃にネーデルリーゼはメモ帳とカメラを持って家を飛び出していった。

行き先は聞くまでもなく分かっている。

昨夜の不吉な予感の正体を確かめに行ったのだ。

アルシオーネは「3人揃って朝ごはんを食べたかった」と残念そうに言うセレッサを

なだめて食卓の席につかせながら、今日が穏やかにすぎることを祈るのだった。








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プロンテラ南東地区。



未明頃に騎士団に一つの通報があった。

墓地からほどなく歩いた路地で男の死体が見つかったのだ。



「・・・まだ野次馬はそんなに居ないみたいですね」



ネーデルリーゼが僅かな動揺と殺伐とした気配を感じ取り、

現場へとたどり着いた時には騎士団員がチラホラと駆けつけてくる頃だった。

遺体から若干の距離をとりつつも様子を伺うようにしている2〜3人の人は

通報した本人かお仲間か、それともただの目ざとい野次馬か。



「ホラ、さがって、さがって!

遺体には触ってないね? 現場にあるものは勝手に弄らないでね!」



騎士団の警官のうちの一人が現場を荒らされないように野次馬を遠ざけつつ、

「KEEP OUT」と書かれた黄色いテープを貼り始める。

黒髪ボブカットの婦警は作業の手は動かしつつも現場の状況をよく観察していた。

周囲は血の海に沈んでいた。

被害者の首についた切り傷から大量の血が溢れたのだろう・・・対角にある白い壁は真っ赤に染まっていた。



「凶器とおぼしきものは・・・あのナイフだけか」



頚動脈を切られ、失血死したと思われるローグの男から2メートル離れたところの壁に

血のついたナイフがつき立っている。



「ミナモねーさん・・・コイツの顔、見覚えねーっすか?」



ミナモと呼ばれた婦警の相棒であろう、短く刈った髪と耳に鉛筆を挟んだルーンナイトの男が

被害者の顔を確認して、キツネ目を軽く見張った。



「どうしたの? デコッパチくん・・・・・・!?

この男・・・確か・・・」



ミナモがローグの顔を確認して何かに思い当たったらしい。

男の名前を口に出そうとしたその時・・・



カシャッ!



シャッターを切る音がこだました。

何かと振り返れば、ネーデルリーゼが現場の写真を収めている真っ最中だった。



「ちょ、ちょっと君! 何してるの! 何者よ!」



「毎度おなじみ『C.A.N times!』です!

お仕事のお邪魔はしませんよ。取材はしますがね」



「記者? 全く、嗅ぎつけてくるのが早いわねー・・・

でも今は取材には応じられないわよ。

大体にして、私たちも通報を受けて来てから間もないんだから答えてあげられるネタも持ってないわ」



「えー? ですけど今、その被害者が誰なのか心当たりがありそうでしたけれど・・・」



ネーデルリーゼは記者魂全開に食らいついてきた。

彼女の位置からでは被害者の顔が見えない。



「この街にいる人間ならたいていの人が知ってるわよ・・・」



「そんな有名人が!?」



ミナモは被害者へと視線を向ける。



「ある意味じゃ有名人ね・・・

グレック・マーフィー。

ギルド『ブラッディ・マリ』の一員」



「!!」
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