ジョジョ夢小説

□とある女子の異世界生活19
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告白から三日目。



相変わらず乙瀬は花京院とはまともに目を合わせる事すら出来ず、そして花京院は及び腰な乙瀬の返事を待ちつつも求愛主張は忘れず日課としている。
しかし、この微妙な関係はそう長く保たないだろう。
花京院は確かに「待つ」と言ったが彼自身、「長くは待たない」とも宣言したのだから。
であれば一月…いや花京院の勢いを見るにせいぜい1週間くらいがタイムリミットだろうか?
すでに三日経っている。
あと四日しかない。
…しかもその目算だって何の根拠もない。
もしかしたら今日には返事を催促されるかもしれない。



(困ったな…)



乙瀬自身、もう頭がどうにかなりそうな程に彼が好きだという事実を自覚している。
それでも。
それでも乙瀬には確たる答えを出せないのだ。

乙瀬にはその理由があるのだ。














■とある女子の異世界生活■














「今日は女同士で語らうから男の子は遠慮してね」



…と、乙瀬の腕に自らの腕を絡ませながら言ったのは、乙瀬の友人の笹山弥栄子であった。

それは放課後。
掃除や係りの仕事など、学校での日課から解放され帰宅するのみという段階の乙瀬を待っていた花京院は、突然の弥栄子の行動に目を丸くした。
ついでに、下校しながら寄り道デートに弥栄子を連れ出そうと二年の教室で待ち構えていた承太郎もしっかり意志の強い目で牽制されてしまい彼は無言無表情で固まっている。



「え?ちょっと…笹山さん」



「……」



唖然としていた男子二人であるが、各々怪訝さを滲ませる。
まさかこの期に及んで弥栄子が邪魔に入るとは思っていなかった花京院は、最大の壁になるであろう乙瀬の親友に静かな闘志を燃やした。



「花京院、仕方ねえ…今日のところは譲ってやろうぜ」



「…承太郎」



承太郎は自分よりも乙瀬を優先された事に若干の不機嫌を醸すが弥栄子の問答無用の眼差しを受けてしまっては食い下がるようなことはせず、小さな舌打ち一つで妥協し引き下がる事にした。
承太郎も近頃の花京院と乙瀬の仲の事は大体察している。
今二人はとてもデリケートな時期。
特に乙瀬は花京院の勢いに圧倒され気味である。



(圧倒されすぎて尻込みしてんじゃねえのかコイツ)



客観的立場の承太郎には、そう見える。
というか、承太郎だけではなく周囲で彼らを見ている人間は少なからずそう思っているだろう。
このまま勢いで花京院が飲み込むか。
それとも勢いに耐え切れず乙瀬が潰れるか。
そんな危うさすらもある…まあ、この花京院が自分の欲を優先して乙瀬を潰してしまう等という愚かな失敗はしないだろうけれども。



(だが八柱は…コイツぁどう見ても花京院に惚れてんだろうに)



そこが不思議。
花京院と乙瀬の気持ちは一方通行では無いはずだ。
少なくとも勢いに差はあれどもしっかりと向かい合ってはいるだろう。
それなのに何故乙瀬はここで足踏みをしているのだろう。
あと一歩、彼に飛び込めばそれで全て解決するというのに。



(何か引っかかる事があって素直に頷けねぇってところか。
迫って落とすのは、八柱の問題解決が先っつー事か…弥栄子)



同じ男として承太郎は花京院の気持ちはよく分かるが、友人を思う弥栄子の気持ちも分かるのだ。
おそらく…というか、もう見た通りそのままに弥栄子は乙瀬寄りの立場だ。
間に入り、乙瀬のため調停役になろうとしているのだろう。



「やれやれだぜ」



口癖と共に弥栄子に向けた瞳は「了解」の意を示していた。
花京院も承太郎に「今は引け」と諫められては、大人しく乙瀬を弥栄子に譲るしかないだろう。
不満顔ではあるがここで駄々をこねる程に彼は愚かでも子供でも無い。



「ご協力に感謝よ」



弥栄子は満足そうに頷くと、そのまま乙瀬の腕を組んだまま「何人たりとも介入許さじ」と言わんばかりの姿勢で屋上へと引きずっていくのだった。



「…何がどうした?」



どうしてこうなったのか、渦中のど真ん中に居る乙瀬だけが何も状況を把握できていなかった。


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