ジョジョ夢小説

□とある女子の異世界生活11
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空条家での乙瀬取り調べの翌日。



「ごめんね乙瀬ちゃん。
本当はお客様なんだからゆっくりしててほしかったんだけれども…」



「いえいえ、ただでお世話になるわけにはいきませんから。
これくらいは手伝わせてください」



「そう?ありがとうね」



乙瀬は一晩お世話になった空条家の朝食の席に、ホリィが作った美味しそうな食事を並べる手伝いをしていた。
昨晩の夕食まではともかく、流石に朝まで全部世話になりっきりでは気が引けるものだ。
大きなお盆には大人数の食事が乗っている。
白米派とトースト派が丁度半数ずつだ。
結局、昨夜は全員空条家にお泊りしたのだ。
これだけ広い空条家であるから客室はいくらでも有り、突然の大人数お泊りにも対応できたので問題は無かった。

そんなわけで。
ホリィ一人に朝の忙しい時間帯で大人数の食事の準備を任せてしまうのは心苦しいものだ。

だから率先して手伝いを申し出にキッチンに顔を出したのだ。









■とある女子の異世界生活■









…が、乙瀬がやって来るよりも前に既に手伝いとして名乗りを上げていたらしい同級生がホリィの補佐として手際よく朝食を皿に盛りつけていた。



「おはよう八柱。
丁度出来上がった所だから、テーブルに並べていってくれ」



きっちり制服に着替え朝の準備を済ませ終えていた花京院がどんどん朝食を完成させていく。
よって、乙瀬の仕事は配膳係しか残っていなかった。



「あ、はい」



指示されるまま皿をお盆に乗せながら見る料理は、とても綺麗に盛られている。
こう、お店で出されるようなセンスでお洒落な見た目だ。
この盛り付けはホリィではなく花京院の仕事である。



「花京院ってさ…」



「何だ?」



「DEATH13戦の時にも思ったんだけど」



「…うん、ちょっと続き聞きたくない気がするな」



「花京院って女子力高いよね」



瞬間、花京院は眉間に皺を三本くらい寄せた。



「君ね、それ男子高校生への評価としては屈辱だよ?
他の言い方無かったのかい?」



「え?だって精神的にも追いつめられてる状況でしかもスタンド戦後で一番疲労してるってのに。
誰よりも朝早く起きて砂漠のど真ん中でも立派に朝食を作る甲斐甲斐しさでしょ。
そんでベビーフードまで用意する手際の良さ。
更に高校生にして既にオムツ交換もできる育児スキル。
そしてこのセンス溢れる盛り付け。
圧倒的に女子力が凄過ぎて今すぐにでも立派なお嫁さんになれるレベル」



「八柱、もしかしてまだ昨日の事を根に持ってるのかい?
それとも僕の事を女だと思ってる?
だとしたら君とはよくよく話し合わなきゃならないんだが」



花京院が盛り付けの手を止め、乙瀬の両頬を摘まんで引っ張る。



「うふふ、二人とも仲がいいのね」



朝も早よから元気な高校生たちをホリィが微笑ましく見守っていた。






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それは朝食後の片づけの最中だった。



大人数で朝から賑やかな食事を終えて登校時間まで少し余裕があった乙瀬は片づけの手伝いをしていた。

ちなみにアブドゥルとジョセフは早速、異世界融合について調べるために朝食後すぐに行動を始めていた。
乙瀬が今現在で知る限りの情報を教えたが、正直あまり参考になるとは思えなかったが…それでも無いよりは断然良いと感謝された。
それから、折角なので日本旅行を少し楽しんでから行こうとゆっくりめなのはポルナレフとイギーだった。
呑気している彼に「噂の五部ナレフになっても知らんぞ」とアブドゥルが一応釘を刺していたが、ポルナレフも彼なりに色々考え纏めたい事があるのだろう。
それに、今は原作と違ってポルナレフの側にはイギーが居る。
…実はエジプト遠征の後、ポルナレフは自ら進んでイギーを引き取っていた。
喧嘩も多々あるが、何だかんだで良いコンビしているらしい。
原作五部とは違う流れになるかもしれない。

そんんわけで現在空条家に残っているのは空条家の母ホリィ、お客人ポルナレフとイギー、学校の準備をしている承太郎、乙瀬と同じく朝食の後片付けを手伝っている花京院である。

そんな中、突然電子音が鳴り響いた。
最初は一体何の音なのかと皆、不思議に思うのと同時に警戒したが、それが何かの呼び出し音だと気付くのにそう時間はかからなかった。
音は乙瀬の鞄の中から聞こえる。
乙瀬には心当たりがある。

ポケベル。

元・スマホ。
乙瀬の部屋に入ればスマホに戻るがそれ以外の場所ではポケベルになってしまう。
相手の番号は知っているものだった。
乙瀬の友人である弥栄子からだ。
この時代に来てから弥栄子のスマホもポケベル化しているようで、既に何度か彼女とはやりとりがある。(外出先から用件を伝える時に公衆電話を捜さねばならないのは少々面倒だったが)



「ほぉ〜…今時のガクセーって奴はそんなん持ち歩いてんのか」



ポルナレフが興味深そうに覗いてくる。
ポケベル自体は知っているが、ポルナレフが乙瀬と同年くらいの頃にはポケベルなんてものは携帯していなかった。
高校生のコミュニケーションツールになっているのを見ていると時代は進んでいくのだなと実感してしまう。
とはいえ、ポケベルの高校生普及率はまだそこまで高くは無い。
現に承太郎や花京院は所持していないし、乙瀬のクラスでも所持しているのは他に2〜3人くらいではないだろうか。



「…そりゃ何て意味だ?」



ポルナレフの見下ろす先には数字の列。
数字暗号である。
正直、乙瀬もまだこのポケベル数字暗号には慣れていないが、ネットで調べたりして最近ようやくパターンを覚えた所である。

文面『4480106』

少し考える。
『0106』は確か…「待ってる」という意味。
『448』は…ネットで調べた一覧には無かった。
弥栄子との間で決めた暗号。
448=ししや=じんじゃ=神社
である。
つまり「神社で待ってる」という意味か。



「うーん、どうやら呼び出しですね。
通学路の途中の神社で待ち合わせっていう内容です」



しかし珍しい。



「あの子いつもは彼氏さんと一緒に登下校するんだけどなぁ」



乙瀬は片づけの手を早める。
待ち合わせに遅れると後が煩そうだ。



「そりゃお前、片時も離れない男女が突然別行動ってなりゃあ、喧嘩が相場だろう」



いかにも経験者は語るという風なポルナレフ論。
実際、そのくらいしか想像できない。



「喧嘩っつーか、分かれた可能性もあるぜ」



「どーでしょうねー。
友達贔屓ってわけじゃないですけども、あの子はホントにイイ女ですからね。
見た目も美人だけど中身もイイ女です。
付き合い始めたのも去年の夏頃だし…そう簡単に分かれるとは思えませんって」



「分からないぜ?
案外イイ女やイイ男ほど、巡り合わせが悪いって事もあるからよー。
思ってもなかった問題に直面して関係が拗れちうまうって事だってあるわけよぉ」



「わあ、まるで経験した事があるみたいですね」



「俺くらいイイ男になると色んな事体験するんだよ」



「例えばエンプレスの時みたいに?」



「嫌な事思い出させるなよ!」



ネーナとの思い出(笑)が瞬時に駆け巡り、ポルナレフは頭を抱え始めた。
項垂れるポルナレフを見て、傍に居た花京院は呆れつつも残りの空皿を一気に回収していった。



「八柱、後は僕がやっておくから行くといい」



「え、いいの?」



「笹山さんが待ってるかもしれないだろ?」



「まあ、そうね…じゃあお願い」



「ああ。それじゃあ、また学校で」



「ありがとう。またね花京院」


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