ジョジョ夢小説

□とある女子の異世界生活10
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※読む前に※
今回、話の中でジョセフのハーミットパープルで「記憶を念写」する描写があります。
そのシーンでは原作やアニメなどで描写されていない、まったくの二次創作能力となっております。
(確か、人の「記憶」を念写するという公式設定は無かったはずなので)
拙宅の小説内でのみ記憶の読み取りや念写も出来るという風にしております。
もしも「公式でそういう設定あったよ」という場合にはこの注意書きは見なかった事にしてくださいませw

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テレビに念写された乙瀬の記憶。
それはまるで奇妙な物語を見ているような気分になるものだった。









■とある女子の異世界生活■












ジョジョの奇妙な冒険は第一部から第四部まで配信されていた。

それを乙瀬は第一部ファントムブラッドから見ている。
始まりの2人…ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドー。
ジョースター家とDIOの因縁の始まりの物語。

念写の場面が切り替わり、今度は第二部戦闘潮流。
ジョナサンの孫ジョセフ・ジョースターを主人公に描いた物語だ。
第二部を見ている時のジョセフの顔は、驚きの中にも「主人公ポジション」でテンションが上がっているのが隠しきれずニマニマしていた。
しかし動画の中の物語が実際にジョセフが体験して来た通りの、そのものであった事に再び慎重な面差しになる。
特にシーザーの最期のシーンでは彼の中に去来した想いは…



『ぅああ…っ!しぃぃいいざぁああああっ!』



ジョセフの胸に偲ぶ想いが宿った時と同じくして、念写の中の乙瀬が見事なしゃくり上げ鼻声でシーザーの名を叫んでいた。
第一部を見ていた時から度々彼女は思った事を口に出していたが、ここにきてついに慟哭というレベルに達したらしい。
そして第二部が終了した後も彼女はシーザーショックを引きずっているらしく、しんみりしている。
「第二部で受けた傷は第三部で癒す」などとぼやきながら、次の動画へ…



ついに物語は第三部。
スターダストクルセイダースが再生される。



第三部の開幕シーン。
そこからして、三部のジョジョが誰であるのか皆察した。
もはや誰も言葉を発さない。
第三部の物語は皆が知っているものだからだ。
だが、しかし。

…知っている物語であると同時に彼らの知らない物語でもあった。

まず保健室。
第二話から既に彼らの記憶とアニメの内容に齟齬が生じていたのだ。
花京院が承太郎を襲撃した時の事だ。



「…居ない?
変ですよ…この時、保健室には確か…!」



花京院がその事を思い出す。
自分があの時エメラルドスプラッシュで承太郎を吹き飛ばした時。
居たのだ。
確かにあの時、仕切りの中に彼女が…

乙瀬が居たのだ。

自分の記憶違いか?
込み上げる不安に押され、思わずあの時一緒に居た承太郎へと目配りする。
承太郎も冷や汗を額に浮かべている。



「ああ、確かこの時…八柱が居た。
だが、このアニメの方では居ない。
どういう事だ…」



嫌な沈黙が降りる。
そうしている間にも念写の中の光景はどんどん進んでいく。
アニメの中では飛行機…タワーオブグレイ戦だ。
この時、既に彼らは乙瀬からの手紙を受け取っていた。
だがその手紙の内容を馬鹿正直に信じる者は居なかったため、この戦いではほぼアニメの通りの結果を迎えた。
そこから先の展開も自分たちが実際に体験して来たこととほぼ一致。
ただし、敵との交戦内容に関しては明らかな差があった。
それはやはり手紙の有無のせいだ。



「このアニメでは八柱は手紙を書いていない…いや、違うな」



承太郎が一つの結論を出す。
きっと誰もが薄々感じていたのではないだろうか。



「本来、八柱乙瀬という人間は居なかった」



もともと存在しない人間…というよりは、本来交わるはずの無い世界の人間だったのだ。
乙瀬の背を抱えるようにして支えている花京院の手に力がこもる。
まるで乙瀬の重み、存在を確かめるようである。
本来居ないはずの人間だなんて、信じがたいものだった。
今確かに、ここに…花京院の腕の中に居るのだから。



「いや、承太郎…もしかしたら逆なのかもしれん。
『乙瀬が』ではない。
『我々が』存在しえないものだったのでは…」



微かに震える声で半ばうわ言のように呻いたのはアブドゥルである。
自分達が「ジョジョの奇妙な冒険」という作品の世界の住人なのではないのか。
少なくとも念写で映された記憶からは、乙瀬はアニメを見ている側の人間だ。
アニメを通してこの世界を見ていた人間だ。



「…じゃあ何かい。
俺達の存在は誰かの作りもん…漫画の登場人物だってえのかアブドゥル!
冗談じゃねえぜ俺のこれまでの人生は、誰に作られたものでもねえ!この世界もだ!
一人一人、確かに命がある、感情がある、生活を営んでいる!
俺は…俺らが、この世界が作りもんだなんて認めねえぜ!」



アブドゥルの意見に噛みついたのはポルナレフだ。
ポルナレフに賛同するように、それまでは我関せずの姿勢だったイギーが一声吠える。



「では他にどう説明する!?
現に、この娘は我々に手紙を宛てた!
全てを見て知っていなければ出来ない事だ!
彼女は別の世界から見ていたのだ…この画面越しに我々を!
だからあれほどに事細かな予言が可能だったのだ!」



「じゃあ、俺らをお造りになった神様ってのはどこのどいつなんだよ!
どこに居るってんだ!」



アブドゥルとポルナレフが言い合い、一気に部屋の不穏さが増した。
二人の意見はきっと誰もが同時に抱いたものだ。
もしかしたらこの世界は作り物だったのでは。
だが、それを認めては自分達の存在を世界まるごと否定する事になる。
だから認めたくない。
しかし、その証拠となる光景が今目の前にある。



「…あのぉ、ちょっといいかしら?」



剣呑な部屋に場違いなほど穏やかな女性の声が舞い込む。
障子を少し開けて、こちらを見ていたホリィである。
全員の視線がホリィに集中する。
ホリィは一度にっこりと笑うと部屋に入って来て乙瀬の側にちょこんと正座した。



「私には詳しい事は分からないけれども。
でもね、一つだけよく分かる事があるの」


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