ジョジョ夢小説

□とある女子の異世界生活9
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※読む前に※
今回、話の中でジョセフのハーミットパープルで「記憶を念写」する描写があります。
そのシーンでは原作やアニメなどで描写されていない、まったくの二次創作能力となっております。
(確か、人の「記憶」を念写するという公式設定は無かったはずなので)
拙宅の小説内でのみ記憶の読み取りや念写も出来るという風にしております。
もしも「公式でそういう設定あったよ」という場合にはこの注意書きは見なかった事にしてくださいませw

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カコーン…と、小気味よい鹿威しの音が響く。
閉じられた障子の向こうには手入れされた見事な純和風な中庭が広がっている。
とても趣ある広々した日本邸宅である。
立派な門に掛けられた表札の名は



『空条』



空条邸。
その一室に、いずれも見事に鍛え抜かれた肉体美の大柄な男たちと一匹の犬が輪を描くようにして座っていた。
筋肉祭りの輪っかの内側には彼らとは実に対照的な細身な少女が正座していた。
全方向からの容赦なく突き刺さるような視線。
少女は針の筵状態で委縮していた。
重々しい痛々しい沈黙が続く。
そんな部屋の障子に誰かの人影が写ると、静かに障子が開いた。



「すまない皆、待たせた」



新たに入室してきた男もまた長身にしっかりとした体格の持ち主であった。
このメンツの中では比較的小柄に見えてしまうが日本人の中では大柄である。
学校帰りに直接ここに来たらしく、新緑色の長ランを着たままだ。
静かな足取りで近づくと、彼もまた皆と同じく輪に加わる。



「うむ、これで揃ったな…では、始めるとするかの」













■とある女子の異世界生活■













この部屋の中で一番年嵩の男が場を取り仕切る。

四方八方、眼光が一層増した気がする。
少女は…八柱乙瀬は憂鬱に深呼吸をした。
乙瀬を真ん中にして筋骨隆々とした男たちがぐるりと取り囲んでいる光景は異常さすら感じる。
いわゆるハンカチ落としの便所席に居る乙瀬はいたたまれない。
せめてもの癒しは部屋の外で心配そうにこちらの様子を窺っている空条家の母、ホリィの存在であろうか。



(ついにこの瞬間が来てしまった…)



スタープラチナの時止めによって乙瀬の早引き逃走計画が不発に終わり、承太郎に首根っこを掴まれ引きずられるような形で空条家に連れて来られ、そして脇目振らず真っすぐ通されたのが第三部お馴染みの顔ぶれが揃うこの部屋だった。
サボりの承太郎はともかく、花京院は5限目を真面目に受けていたため彼の到着は一番最後になったのだ。



「お嬢さん。
何故この場に連れて来られたか、それは理解できているかね?」



承太郎と同じ色の瞳の老人…ジョセフ・ジョースターが乙瀬の目の前に例の手紙を開いて見せる。
もしも肝心の乙瀬本人が身に覚えが無い…まるで見当違いの勘違いで連れて来られたのだとしたら問題である。
問題であるが…しかし、この場に集う面々は乙瀬で「当り」だとどこか確信めいたものを持っていた。

乙瀬がこの部屋に足を踏み入れた時、彼女は部屋に集まっていたジョセフ、ポルナレフ…と視線を巡らせ、そしてアブドゥルとイギーの姿を目にした時、明らかに表情を変えたのだ。
最初驚いたように目を見開き、それからほんの僅か…一瞬だけその顔に浮かべたのは確かに笑みだった。
あの笑みは安堵でもあったが、それよりももっと万感の思いを込めた心嬉しさだったろうか。
何故初対面の相手にそんな感情を持つことが出来るのか。
彼女にとっては単なる初対面では無いのだとしたら。
実際に会うのは初めてであっても、しかし前もって彼らを知っていたのであればどうだろうか。
彼らは確信を乙瀬に抱いていた。
そんな想いがこの張り詰めた空気ごしに伝わってくる。



(もうここまでが限界か…
バレるの早かったなぁ…ていうかバレるなんて思ってなかったわホント)



こうなってしまっては、潔く認めるしかないだろう。
乙瀬は身を固くしつつも観念したように眉を垂れ下げてジョセフを見つめ返し、小さく頷いた。



「…流石にここまで来たら、もう惚けるのは無理そうですねぇ」



溜息のような声で全てを認める。
室内の空気が先ほどまでのただの緊張だけの膠着した気配から動揺が混じり始めた。



「その通りです…あたしが、その手紙を書きました」



「そうか…聞きたい事は山ほどあるが…一つずつ解決していくとしようかのう。
まず最初に教えて欲しいんじゃが、君は我々の事を知っていたのかね?」



「はい。知ってました。
大体のプロフィールも、スタンドについてもある程度知ってます」



「DIOに関しても?」



「はい…DIOの事も、手下のスタンド使い達の事も。
全てを把握している訳じゃないですけどね。
でも少なくとも、皆さんが戦ってきた敵スタンドについては知っていました」



「君は…DIOの元に居た事があるのか?」



「いいえ、それは無いですよ。
DIOには実際に会った事も無いし見た事もありません。
スタンド能力なんて持ってないので、そもそもDIOに目を付けられる事なんて無いですからね」



「ふむ、そこが分からんのじゃよ。
スタンド使いでもない君が、会った事も無い相手の事を…そのスタンド能力まで知っておったのは何故じゃ?
それに、あの旅で起こる出来事も襲って来る敵の事も、まるで未来を見てきたかのように的確に当てられた。
一体何者なんだね君は」



ジョセフの翡翠の瞳が硬度を増した。
乙瀬は少し気圧されるが、言葉に詰まることは無かった。
ここまで喋ったのなら全て正直に白状せねばかえって痛い目見る事は明白だ。



「『見てきた』っていうのは近い感覚ですね。
といっても、実際にこの世界では未来を見てきたわけじゃないですけど。
先に情報として知っていたんですよ」



混乱の気配。
乙瀬の言葉は彼らには理解しがたい響きが含まれていた。



「おい、待ちな…テメエ、今『この世界では』と、言いやがったか」



承太郎が問題の発言について食い下がる。
「『この世界では』未来を見てきたわけじゃない」
それではまるで…



「テメエは別の世界から俺たちを見ていた…そう聞こえるんだがな」



「うーん…
そこのところなんですけどね…あたしにもよう分からんのですよ」



どこかで聞き覚えのあるセリフ回しに承太郎の眉間に深い皺が寄った。
おお、怖い…
でも実際のところ乙瀬にも自分の身に起きている事を全て理解できているわけではないのだ。


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