ジョジョ夢小説

□とある女子の異世界生活8
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5限目



「ぃよっしゃぁあああーーー!」



昼食後、瀕死のダメージを背負って教室まで戻って来た乙瀬は、次の授業が体育である事を思い出して雄叫びに近い声を上げた。



「乙瀬、何でそんな元気なの…次、体育だよ体育。
昼食後の体育なんて身体重いし怠いし、テンション下がるわ…
しかも長距離走とか冗談やめてっての」



友人の弥栄子が乙瀬の最高にハイな姿を見てげんなりする。
5限目の体育なんてかったるいだけで、弥栄子の反応が普通だ。
しかし今の乙瀬には救いの一時間なのだ。
体育…小学生までと違い中学に上がればそれ以降、普通は男女別なのである。
男女別なのである!!
本日、男子は体育館でバスケットボールで本女子は校庭で1000m走。

承太郎や花京院が傍に居ない今のうちに色々対策を考えるべきだ。
幸いにも長距離走なら長考には丁度いいだろう。
特別いいタイムを出そうとか思ってはいないし。
ただひたすら走ってればいいだけなのだから。
元々運動神経は良いし特に走るのは得意だ。
考えてる間に走り終わるだろう。
血行も良くなってきっといい考え浮かぶ…と、信じたい。

体操着に着替え更衣室を出る。
この世界に来てから体操着…短パンではなくブルマである事に軽く抵抗感を覚えたものだが、今はもうそんな事もどうでもいい。
どうせこの季節はジャージ着用だし。
体育の時間有難うございます本当に有難うございます。
既に校庭に集合しつつある女子の一団に揚々と混ざる。
体育館は校庭とは反対方向だから、男子の姿を見かける事はない。
落ち着いて思考する事ができる。

授業開始の号令で体育教師が出す指示を聞きながら乙瀬はコーストラックに並んだ。






5分後



何かを思考しながらだとあっという間に1000mなど走り終わってしまうものだ。
元々、走るのは強い乙瀬であるから本当に考え事の片手間だった。
とはいえ、走力はあるがスタミナはそこまで無い…どちらかといえばスプリンター傾向なので息切れはしている。
最初の走者が全員終わった所で、次の走者と交代だ。
走り終えた女子達は今、全員トラックの外に出て各々休憩中だ。
乙瀬も座り込んで休憩中である。
しかし思考だけは今も働いていた。



(すぐ授業早引きしてばっくれよう)



本日放課後は恐怖の時間。
科学のレポートを花京院と一緒に書く約束をさせられてしまった。
その時には今度こそ、核心深く入り込んでくる。
…そうなる可能性が高い気がする。



「…せ、せんせー…何か頭がクラクラしますぅ」



いかにもシンドイ様子で息を荒く吐いてみせる。
…という事で体調不良を装い退避だ。



「保健室、行ってきます」



宣言早々、ダッシュである。
あきらかに病人の動きではない。
唖然とする教師の顔が憮然となるまでにそう時間はかからない。
しかし今はそれよりも花京院と顔を合わせる前に帰宅する事が大事である。
保健室?どうせこのままサボりなんだから行く訳が無い。

まずは着替え。
制服に着替え終えた乙瀬は時計を確認する。
1000mを5分ほどで走り切ったおかげで授業時間はまだまだ残っている。
40分近くたっぷりと。
ニヤリと笑い、鞄を回収しに教室へ戻る。
教室はシン、と静まり返っている。
計画通り…!
誰も居ない。

悠々とした足取りで自席の鞄を回収する。
一応、弥栄子には心配かけないように書置きを残していく事にする。



「ええと…
『一身上の都合によりサボります。体育で体調崩して早引きしたって事にしてね。内緒だよ。よろしく』…と。
こんなもんでいいか」



書置きを弥栄子の机の上…は、他の人にバレてしまうので、更衣室の彼女のロッカーにでも挟んでおこうか。
紙を畳んでいると廊下の向こうから足音が近づいてくるのが聞こえた。
生徒である可能性は低い。



(用務員か、教員の誰か…)



…ただ、気になるのは一点。
何故か足音はこの教室に差し掛かったところで止まっているという事だ。
急にホラー感が増した。
嫌な汗が額を濡らす。



「……」



こういう時の嫌な予感というのは、嬉しくない事に当たるものだ。
恐る恐ると視線を入り口に向ける。






…そこには、身長195pの人影があった。






嘘だろ承太郎。



「早引きか?
丁度いいテメエに話がある」



乙瀬の心臓が縮み上る。
不良の承太郎がサボりなのはまあ、納得の範囲だ。
しかし、明らかに不自然なタイミングではないか?
何故乙瀬が早引きするタイミングぴったりに現れたのか。



(…ハイエロファントか!
やっぱりハイエロが追尾していたのか!?
ハイエロ連絡係か!!)



もうそれしか考えられない。
こちらがスタンドが見えないのをいいことに、やりたい放題やってくれいている。
こりゃあもうアカンですよ。
アカン展開ですよ。



「ちょいと面貸しな」



顎をしゃくって、ついて来いと言わんばかり。
何コレくそ怖い。
学校一の不良先輩に呼び出しされた。
絶望しか感じない。
だが、しかし…



「だが断る!」



しかめっ面した承太郎の鋭い視線であるが、乙瀬はここで屈するわけにはいかない。
これが花京院の表面上は綺麗な毒花みたいに、エグみのある美しい笑顔だったら耐えられなかった。
承太郎で助かったかもしれない。
乙瀬は承太郎に背を向けると窓枠に手をかけた。
そして一気に外へと身を躍らせる。






…あ…ありのまま今起こった事を話すぜ。



(『あたしは窓から飛びだして空条先輩から逃げたと思ったら、いつの間にか教室内で空条先輩に首根っこを掴まれていた』
な…何を言ってるのかわからねーと思うがあたしも何をされたのか分からなかった…
頭がどうにかなりそうだ…
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。
今まさに恐ろしいものの片鱗を味わってるぜ…)



現実は非情である。
承太郎は学帽の鍔を摘まんで下げた。



「やれやれだぜ…手間かけさせるんじゃあねえぜ」



一般人相手に時止めは卑怯だ。
…と、言いたくても言えない乙瀬であった。


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