ジョジョ夢小説

□とある女子の異世界生活7
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(これなら何かしら反応せざるを得まい!)



ハイエロファントグリーンが両腕を前方に突き出す…つまり、向かい合っている乙瀬に向けて。
その両掌からはエメラルドの液体に見えるものが飛沫を上げてキラキラと煌めいている。
エメラルドの飛沫が渦巻き凝縮され渦の回転を速くする。
その渦の中には緑色の宝石のような粒が見える。
エメラルドスプラッシュだ。
生身でまともに喰らえば身体は千切れ飛ぶだろう。



(…どうしたっ!これでもまだ惚けるのか八柱乙瀬!
身を守るためにスタンドを出してみろ!)



乙瀬は教師の話を聞いているのかいないのか、相変わらずハイエロファントグリーンの向こう側の黒板をぼんやりと眺めながら大欠伸をしている。
ハイエロファントグリーンは今にもエメラルドスプラッシュを放つ…そんな姿勢で乙瀬と向き合う。



……



乙瀬の目の前でエメラルドスプラッシュを放とうとしていたハイエロファントグリーンは消えていた。
ギリギリの姿勢で花京院が己の精神体を戻したのだ。



(…彼女には見えていない)



これだけやってもピクリとも様子が変わらないのだ。
見えていないフリをしているのだとしても、必ず何かしらの反応はあるはずだ。
乙瀬はこのクラス中の人間と同じく、まったくハイエロファントグリーンの存在を認識していないのだ。
少なくともスタンド使いではない。
スタンドを知らぬ者が、DIOの手下達のスタンド能力を事細かに知っているとも思えない。
あの手紙の差出人は乙瀬ではないのか?
しかし、違うと否定するにしては彼女は怪しすぎる。



(仕方ない…今は『コレ』で引くとしようか)



実はエメラルドスプラッシュを放とうとするその脇で、触脚を乙瀬の鞄の中に伸ばして彼女の筆跡が残っているものをかすめていたのだ。
あの手紙は処分せずジョセフが管理している。
乙瀬を実際に問い詰めるにしても、手紙と彼女の筆跡を照らし合わせて分析してからでも遅くは無いだろう。
花京院は自分に言い聞かせるようにして急く気持ちを落ち着かせた。
ひっそりと細く息を落とす。



(頭を冷やそう…少し焦っていたようだ)



差出人がどんな意図で自分たちにあの手紙を書いたのか、敵なのか味方なのかもまだ判別としていないのに、危機感よりも高揚感が勝っていた。
乙瀬が自分と同じ世界を見ている人間かもしれないと思った瞬間、動悸がしたのだ。
それは敵と対面したときの激しく興奮するような鼓動にも似ていたが、それよりももっと胸の内から焦がす熱を持っていたように思う。
彼女がスタンド使いであれば…自分と同じであれば良かったのに…そんな願望が奥底にあった事に気付く。
…いや、この際もうスタンド使いだろうとなかろうと、どちらでも良い。
スタンド使いではなくたって、乙瀬は花京院にとって他者とは少々異なる特別な何かを感じる人物である事に変わりない。



(八柱乙瀬…
手紙の差出人は君なのか?
僕は…君であってほしい)



もしも本当に八柱乙瀬が差出人だったなら聞きたい事が沢山ある。
それと同じくらいに言いたい事もある。
…いや、今となっては聞き出す事以上に伝えたい事があるのだ。



(だから、君がもし差出人であるのにその事を隠し通そうとするのなら…
それ相応の手段を用いてでも君の隠し事を暴かせてもらうよ)






花京院の想いなど知りもしない隣席の女子は、相変わらず授業に退屈した顔で欠伸を漏らしていた。


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