無双orochi2夢小説

□■赤鬼さんと一緒(8)
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「で。どうだったの?」

は?
何がだよ。
話の出だしから「どうだったの?」はないだろうに。
玲は眉根に小皺を寄せながら首をかしげた。
玲の目の前には甲斐姫、阿国、卑弥呼、妲己がいた。
なかなか珍しい組み合わせだ。

「何がよ。何の話よ」

玲は既に厄介事な予感がしていた。

















「赤鬼さんと一緒」

〜 orochi2トリップシリーズ8〜















玲の返事に焦れたように甲斐姫が詰め寄った。

「だから、昨夜のことよ!」

「昨夜?」

昨夜というと、酒呑童子が自分の正体に気づいて塞ぎ込んでいた時だ。
玲が様子を見に行く姿を何人か目撃していたのだろう。
ようやく合点のいった玲は、一つ頷いてみせる。

「ああ、酒呑童子ならもう良さそうよ」

随分落ち込んでいたが、もう大丈夫だろう。

「なんか色々吹っ切れたみたい。
今朝会った時なんて清々しい顔してたもん」

今朝に顔を合わせた時は酒呑童子にはもう落ち込む気配はなかった。
全て受け入れた上で、己は己であることを決めたのだ。
一人安心したようにほっとため息をつく玲は、話を聞いていた女たちの様子が徐々に興奮していく事に気づいていない。

「ちょ、ちょっと聞いた・・・?」

甲斐姫がふるふると興奮で震える手を拳に握りしめて頬を紅潮させた。

「聞いた・・・聞いてもうた!」

卑弥呼は目を真ん丸にしながら飛び跳ねた。

「んまぁ! 酒呑童子さんったら、ついに『吹っ切れ』たのね! で、昨夜は『良さそう』に? あら、玲ちゃんったら結構な名器だったのね。
なるほど、なるほど。それで『今朝は清々しそうに』・・・心ゆくまで味わったっていうことね!」

妲己が妙な色気を醸しだしながら嬉々とした声ではしゃいだ。

「玲はん、よろしおすなぁ・・・酒呑童子様のあの逞しぃ腕の中で・・・やぁん!」

阿国は何かを妄想しているらしく頬を染めながらうっとりしている。
全くの予想外な反応に、ようやく玲がおかしいと思い始めた時には、事態はすっかりヒートアップした後だった。

「おめでとう玲! 今夜は赤飯よ!」

「玲はん。今夜の準備はうちらに任せて、酒呑童子様とゆっくりしはっておくれやす」

「ご馳走、たんと用意せなな!」

「玲ちゃんてば、からかい甲斐があるから暫らくの間は楽しめそうなネタよね」










一体何を言っているのだね君たちは。









何やら怪しい方向性に向かっているようだ。
玲が慌てて訂正を入れようとするも、一歩遅かった。
既に女たちは興奮のままに駆け去っていってた後だったのだ。
女の噂力はハンパではない。
それは女である玲が一番知っている。
噂の広まり方は、ねずみ算式に驚異の爆発力を誇る。
しかもそれには必ず尾ヒレ背ビレがついてとんでもない大事になるのだ。
それが女の井戸端会議の恐ろしいところだ。


このまま彼女らを放置したら明日には「玲が酒呑童子の子を身篭っているらしく、今年の冬には産まれる予定」とかなっていそうだ。


世話焼き好きで、せっかち気味なネネあたりは祝言の準備や産着と赤ん坊の着物のセットを用意しはじめてしまうだろう。
事態の収集がつかなくなる前に、火元はきっちり鎮火しなくてはならない。

「でないと、あたしは明日からどんな顔して過ごせばいいのかわかんないでしょ!」

羞恥すぎる。
恥ずかしすぎて酒呑童子に会うのが恐ろしい。

「うおおおおおおおお! 待てゴルァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

その日一番の大怒号が討伐軍の陣営に響き渡った。
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