無双orochi2夢小説
□■赤鬼さんと一緒(2)
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「いやぁ、綺麗だなと思って」
思いもよらなかったその言葉に、赤鬼の思考は停止した。
酒呑童子が見おろす先には、笑顔満面の少女がその黒々とした瞳で彼の左右色の違う瞳を覗き込んできた。
綺麗・・・?
酒呑童子は心の中で何度も繰り返し呟き、そしてやはり理解するに難解な少女の感性に眉間に皺を寄せた。
「あ、ごめん。嫌だった?」
酒呑童子の反応を嫌悪の感情と取った玲は、途端それまでキラキラと輝かせていた瞳を申し訳なさそうに瞬かせた。
「嫌ではないが・・・解せぬ。なぜこのようなものが美しく見えるのだ?」
「えー? 宝石みたいで綺麗だよ?」
「宝石・・・」
酒呑童子はあまりに自分に似合わない表現に半ば呆然と口を開いていた。
分からないものだ。
この娘の瞳に映る世界は一体どのように見えているのだろうか。
酒呑童子は尽きぬ興味と戸惑いに挟まれ、途方に暮れたように玲を見つめるのだった。
「赤鬼さんと一緒」
〜 orochi2トリップシリーズ2〜
それは、とある昼下がり。
連日の戦続きがウソのように穏やかな時が流れ、歴戦の将達は一時の休息を満喫していた。
そして酒呑童子もまた、己の幕舎で一人酒を味わっていた。
「・・・む。無くなったか」
空になった徳利の口からはちょろちょろと細い糸がたれ、やがて一滴二滴と雫が落ち、杯に波紋を浮かべた。
おかわりを求めて周囲へと視線を流すが、酒で満たされた徳利は見つからず、その残り香が漂うばかりだ。
調達してくるか。
酒呑童子はまだまだ飲み足りぬ、と、胡坐をかいていた腰を上げ幕舎を出る。
彼の幕舎は一番高い岩場にあった。
崖上から陣営を一望する。
周囲の景色は相変わらず荒れた大地だ。
そこに溶岩の川が流れ、時折岩肌に火の玉が降り、ぶつかり弾けた。
殺風景の中に白い幕舎が並び、広間の一角にかぐやが用意した法陣が青白く光を放つ。
そこから橋を越えていけば湯気が立ち上る白布の屋根が見えた。
あそこから料理と酒の匂いが漂ってくる。
そして酒呑童子の鼻腔に酒とはまた別格に彼を酔わせる香りが掠めていき、胸の奥をくすぐった。
我知らず口元が綻ぶ。
酒呑童子は上機嫌に飲店へと足を向けた。