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(…何故あたしがこんな目に…
いや、まあそりゃストーリーに一噛みすると決めた時から自分のリスクはある程度覚悟してたけどさぁ。
まさかこんな形で切り崩されていくとは思わなんだよ)
じわじわと攻められ切られ突かれるような、そんな感覚。
そうして元々薄っぺらい乙瀬の精神力というメッキは剥げていく。
メッキを少しずつ爪の先に引っ掛けるようにして剥いていくのは花京院である。
あの男…優男風の大人しい顔してその実は結構なサディストの気があるようだ。
いや、まあそれは作中からも何となく察せられたけれども。
どれだけ理性的にしていても普段穏やかでも、スタンド使いという時点でもう攻撃性の高さが証明されている。
(精神攻撃うますぎだろ…)
頭が良いからか。
嬲り方を心得ているというかなんというか。
敵に回すと一番怖いタイプだ。
友達とのマッタリとした昼食時間は断念であるが、花京院に絡まれながらの昼食よりもボッチ飯の方がずっとマシだ。
弁当箱を抱えながらまずは自販機まで走り適当にジュースを買うと、どこか一人になれそうな場所を探す。
体育館裏…は、不良のたまり場。
不良たちはこの季節でも気合十分らしい。
中庭の花壇前のベンチ…は、リア充の指定席。
寒いけど熱々だから大丈夫なのだろうな。
保健室…は、休憩場所でも避難場所でもない。
本来の用途以外での利用は常識人的に考えて避けたい。
まさか女子トイレに籠って食べるわけにもいかない。
衛生的にも社会的にも嫌だ。
ベタだがやはり屋上だろうか…
195pの先客が居そうな気もするが…
(顔だけ出してみて、居たら諦めようかな。
諦めて校庭隅っこの植え込みあたりで隠れながら食べるか)
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そんなわけで屋上を覗いてみると…
「お、運がいい」
人の姿は無し。
やはり、こんな寒い時期では承太郎も普段は来ないらしい。
先日と同じく壁を背にして腰を下ろし弁当を広げて黙々ボッチ飯を味わう。
「静かでいいねー…落ち着く」
ほう、と安堵のような溜息を落として呟く。
壁に遮られ随分遠い外の音や人の話し声がぼやけた音として時折聞こえて来るだけ。
とても静か。
…だから階段を上って来る規則的な音は、とても異質なほどハッキリと聞こえてきた。
足音。
歩幅の感じや音の重さからして…男子生徒か?
瞬時乙瀬に緊張が走る。