ジョジョ夢小説

□とある女子の異世界生活21
1ページ/4ページ





(彼女は戦いにでも行くつもりだろうか?)



少なくとも花京院には八柱乙瀬の姿がそのように見えた。

つい数日前に自分が恋心を告げた少女の顔は今…
先日まで花京院に見せてくれた鮮やかに色づいていく花のように恋を覚えた初々しい少女の顔ではなく、戦地に赴く戦士のような顔をしている。
それも日増し時経つにつれて乙瀬の気が立っていくようである。
それに伴い彼女の寝不足も酷くなっているのは、その蒼白い顔色や荒れ気味の肌や目の下の隈からも明らかである。
告白に対する答えを出す…そのための準備をしていると、彼女はそう言っていたがこれは異常だ。
異常以外の何物でもない。
とてもではないが、単なる告白の返事に向けた行動とは思えない。



(乙瀬…一体何を?)



乙瀬の行動にも訝しい点がある。
帰宅中の寄り道だ。
学校帰りに彼女が「寄り道したい」と言う事はこれまでにも多々あった。
いきつけ喫茶店の月ごと変わるケーキを賞味しに行ったり、本屋の漫画コーナーで立ち読みしたり新刊を買ったり、コンビニに寄ったり…そんな感じのごく普通な高校生の行動であった。
それが、この一日前二日前あたりからは、とんでもなく乙瀬らしくないどころか一般的な高校2年生らしくない場所に寄り道していたのだ。
彼女曰くには「用事」という事なので、帰宅途中で解散となったが、どうにも引っ掛かりを覚えたものだ。
だから花京院は50m〜100mの間隔で彼女の後を追った。
もちろん、見失っては困るのでハイエロファントグリーンを乙瀬のすぐ傍に付けた。
それがまさか。



(まさか国立国会図書館…)



あの『勤勉』という二文字とは、ほぼ縁のない乙瀬が何故そんな所に?
結果的には国立国会図書館の利用対象年齢は18歳以上からなのでその段階では無駄足であった。
しかし、図書館が駄目ならばと次に彼女がとった行動は公衆電話でどこぞに電話を掛ける事だった。
タウンページを捲りながら掛けた番号は新聞社。
何故新聞社…と思ったが、最初に図書館を利用しようとしていた事からして乙瀬が何かを調べようとしているのはすぐに分かった。
国立国会図書館を利用しようとするくらいだから、目的の記事は数年は昔のものだろう。
通常の図書館では置いてある新聞は過去一月くらいなもので、年単位で古いものとなるとまず扱っていない可能性の方が高い。
ハイエロファントグリーン越しに聞いた内容は、やはり過去の記事閲覧と複製についてである。
何社目かの電話でようやく話しが上手く通ったらしい。
聞いた限りだと1984年代の記事についてだった。
しかも杜王町関連に限定していた。

何故、杜王町の…しかも数年前の事で?
乙瀬のあの鬼気迫る様子からして、あまり穏やかな内容ではないだろう。



(君は何をしようとしているんだ)















■とある女子の異世界生活■















花京院に告白された日から丁度一週間後の日曜。

乙瀬は相変わらず、あちこち図書館や新聞社を行ったり来たり、かと思えばジョジョwikiやその他情報サイトを巡っていた。
そして本日、休日昼間っから情報収集に精を出しており、鞄の中にはファイルと先日に入手して来たばかりの新聞の複製を何枚か詰め込んでいる。



「…ちょっと一休みしようかな」



流石に午前中歩き詰めだったので大分疲れた。
丁度、いつもの登校路の神社近くまで来ていたので、乙瀬は休憩がてらこれからの事を考えようと寄り道する。
相変わらず神社は静かでいい。
鳥居を抜けて、いつもの石段に腰かける。
そして膝に置いた鞄からファイルを取り出して中身を手繰った。



「やっぱ、4部だけ厚みが違うなぁ」



乙瀬が調べ、集め、まとめ、考察した資料。
一番書き込んだものが多いのは4部だ。
現在アニメ配信されているのは4部までだし日本国内の出来事だから、やはり筆は進むものだ。



「キラークイーンか…」



吉良吉影のスタンド…キラークイーンは、ある意味ザ・ワールドよりも恐ろしい。
カリスマという意味でDIOと比べれば吉良は圧倒的に地味であるが、狡猾さとスタンドが秘めた能力と可能性という点では吉良に軍配が上がるだろうと乙瀬は思っている。
吉良との勝負は本当に、一つ一つの些細な要因が勝敗を分ける。
DIOとの戦い以上に慎重にならねばならない。



「現時点で何か出来ることは無いかな…」



吉良の犯行は確か、4部時間軸から15年前にはもう始まっているはずだ。
…そういえば吉良の父親はエンヤ婆から弓と矢を得ていたはずだ。
となれば今現在でもう被害者は相当数居るのだろう。
S市杜王町は既に行方不明者数や殺人事件が他の県よりも多いのではないか。
杜王町の現在についても父親が今丁度、杜王町に単身赴任しているのだから様子を聞く事くらいはできるだろう。
とはいえ流石に事件性のあるものについて突っ込んだ事を調べさせるような頼みは出来ない。
ただでさえ父親は現在日本中で一番危険とも言えるスタンド使いが潜伏している町に居るのだから、これ以上に危険には晒せない。



「吉良関連を非スタンド使いが探っていくのはあまりにも危険すぎかぁ」



…ならば。
虹村家についてはどうだろうか。
DIOを倒したのだから虹村家の父親はもう肉の芽の暴走で姿が変容してしまっているだろう。
虹村形兆が今独自に色々調べまわっているはずだ。
彼らは今もまだ東京に居るのだろうか?
できるだけ凶悪犯罪者(アンジェロのような奴とか)や危険人物にスタンド能力を持たせるようなことはしたくない。
そのためには形兆に矢を入手させてはならない。
かといって形兆が矢を得なければ杜王町でスタンド使いが増えず吉良に対抗する勢力が減ってしまう。
それに広瀬康一は5部にも登場するらしいし吉良との戦いでも彼のスタンドは大いに活躍した。
そう考えると康一のスタンド覚醒は外せないだろう。
少しでも心強い仲間が欲しい。



「4部が杜王町っていう事は典明だって関わっていきそうだし」



4部以降の物語に、本来3部で命を落とした花京院、アヴドゥル、イギーは関わりようが無いのだが、この世界では彼らは存命である。
どんな形で他の部に関わっていくかは乙瀬には分からないし今集めている資料は正直、今後の部で活躍していく承太郎に渡すのが一番効率的で、それが筋なのだと思う。
けれども、少なくとも4部の舞台は日本国内でしかも花京院の実家がある杜王町だ。
となれば花京院とて他人事ではない。

元々は花京院の覚悟を測るための資料集めだったが…
4部が杜王町舞台となれば彼自身や彼の家族の身が心配になるというものだ。
このファイルの中に納まる情報の全てが、彼らの無事のために役立つ事を願う。



「とりあえず収穫をファイリング」



新聞の切り抜きをファイルに挟む。
乙瀬はついに目当ての記事を見つける事が出来たのだ。

杉本鈴美についての切り抜き。

当時、彼女が吉良によって殺された記事だ。
この切り抜き事態には、作戦に役立つような要素は無いと言っても良いだろう。
しかし、鈴美は4部のスタンド使い達の架け橋のような存在なのではないかと乙瀬は思うのだ。
鈴美は殺された時からずっと、吉良が倒されるまであの場所で地縛霊として佇み続けている。
もちろん、今もきっとあの路地に居るのだろう。
死後となっても、たった一人でも、杜王町の未来を案じ誇りを捨てず思い続け…そして10年後に集う正しい心を持ったスタンド使い達に訴えかけた強い女性だ。
ある意味では彼女が4部のスタンド使い達の核なのではないだろうか。
だから、これは乙瀬の精神的な発破として必要だった。



「さて…と。
これから、どうしよう」



今の乙瀬の状況では調べられる情報は、もうこれ以上には無い。
だからファイルはこれで完成の状態なのだ。
後は内容の最終チェックくらいか。
それが終わったら、いよいよ…だろう。


次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ