◆長編◆

□東京彼女
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東京彼女T


「不二君、お願いがあるねん!」

不二が四天宝寺の白石からお願いされたのはとんでもない事だった。

「えぇっ?無理だよ…僕が白石の彼女のフリなんて!」









事の発端は全国大会後。
白石の試合を見て、完全に白石に落ちた子がいた。
同じ学校に通う3年の女子。
もちろん、学校ですれ違う程度なので白石は彼女の事を知らない。
そんな彼女からの猛烈なアプローチがあり、ことごとく白石は断って来ていた。
それなのに、彼女はあきらめるどころかさらに執拗に白石を追いかける。
とうとう耐え兼ね、白石はこんなことを口にする。

「俺…付き合ってる子おるねん!」

もちろん、彼女なんかいない。
そんなこと、彼女もわかっているので「じゃぁ、会わせて?」と返してきた。
「彼女、東京やから会われへんねん。」と言ってみれば、「来週青学と練習で東京行くでしょ?」と言われる。
恐るべき調査力。
青学との練習試合は明日、木曜日に発表予定の内容で3年しか知らない内容だった。
なぜ彼女は知ってるのだろう…。考えてるうちに矢継ぎ早に彼女は白石に詰め寄る。

「私、来週東京に用事があるの。その時に一緒に遊びましょう?」

半ば無理やり、予定を会わせられてしまった。
有無をいうことなど許されないといわんばかりに。


「謙也ぁ〜、千歳ぇ〜、どないしよぉ〜…」

「あぁ、例の子?よぉ頑張るなぁ。」

「こぎゃん男のどこが好きたいかね?」

「白石モテモテやなぁ〜モテモテ〜っ!」

「お前ら…楽しんどるやろ?」

しまいには金ちゃんまでも乱入してくる。
本気で困ってる白石をよそ目に、ある種のお祭り騒ぎ状態だ。

「そんなに言うんやったら、青学の誰かに彼女役でも頼めばえぇんちゃいますん?」

「財前、エェ考えや!」

途中で乱入してきた財前の意見に以外に乗ってきた白石。
財前の頭の中には、青学のマネージャーの二人のどちらかを想像していたのだが、事態は思わぬ方向へ進む。

「コシマエは無理やで。アイツ、無愛想やから。」

「せやな〜。白石と並ばすならちっこい方がえぇもんな。乾や桃城はアカンし…手塚とかは論外やわ。」

「不二がちょうどエェんちゃう?白石、不二にベタ惚れやったしぃ〜!」

金ちゃんが不二周助といった言った瞬間、白石は思いっきり目を輝かせた。
白石の脳内では、女の子になった不二とデートできる!それだけがループしていた。
その瞬間、「エクスタシー!」と叫びだす。

「アカン…部長、かなりキモイっすわ。つか、普通青学のマネージャー行くやろ?」

「いや〜、白石は不二にベタ惚れやから無理やで。」

「あ、俺ぜったい不動峯の橘妹がかわええと思うんやけど。」

「俺は青学のツインテールの子や。なんさま元気あってええ。」

呆れる財前をよそに、千歳・謙也・金ちゃんは自分たちの好みを語り合う。
白熱するのはいいが、そこに白石が惚れた相手が男という疑問は存在しない。
というより一切のスルーだった。
おそらく、小春達を毎日間近で見てるから抗体があるのかもしれない。

「てか不二!お前、不二の電話番号しっとん?」

謙也が聞くと、サッとポケットから携帯を取り出し電話帳をみんなに見せる。

「あったり前や!ちゃんと聞いとおっちゅーねん!」

「せ…せやなぁ、白石の事や。タダで帰るわけ無いわな…ハハっ。」


呆れる謙也をよそに、白石は鼻歌を歌いながら携帯の通話ボタンを押す。

「あ、もしもし。不二君?白石やけど。」

『やぁ、白石。久しぶりだね。』

久々に聞く不二の声にテンションは最高潮へと向かっていた。

「あんな…お願いがあんねん。」

『僕でできることなら、いいよ?』

不二の声を聴いただけで「エクスタシー!」と叫びそうな衝動を抑え、大きく息をすって思い切って頼みを伝える。

「不二君、俺の彼女になってくれへん?」

『はっ?!』

白石の発言に、四天宝寺テニス部全員が度肝をぬかれ、その後爆笑の渦に巻き込まれたのは言うまでもない。
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