王子様と執事
□Claude to love
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午後からウィル王子が直接フィリップ王国について教えてくれると言うので、緊張しながらクロードさんが迎えに来るのを待って居た。
" コンコンっ…"
""ぎゃっ!来た!""
ユナ「はいっ!どうぞ!!」
焦ってドアノブを掴むと、いつものドアノブとしての抵抗が無く、その勢いのまま前につんのめった。
ユナ「わっ!!」
転ぶっ!!!
と感じた瞬間、
"ポスっ!"
と、体が包まれ衝撃が吸収された。
「危ない……! 」
パリッとシワの無いスーツ、フワッと優しく香るシダーやムスクの香り…
ユナ「クロードさん…?」
しっかりとした胸板から上へと顔を上げ、見上げるとそれはやはり端正な顔立ちのクロードさんだった。
"" トクン…… ""
ユナ「あっ…!ごっ!
ごめんなさいっっ!」
クロードは、その表情に反して、さり気無く、そして優しく私の肩を起こしてくれた。
クロード「あなた…、今私に "どうぞ" と言ったのになぜ自分で開けるんですかっ!」
ユナ「ううぅ!わかりませ〜ん!」
クロード「全くっ…。
落ち着きが無さすぎる!
何かする前にひと呼吸置いてから行動して下さい!」
先生に叱られてる子供みたいに "シュン…" と下を向く。
ユナ「ハイ…ごめんなさい…。気をつけます…」
" ふぅ…"
クロードさんが一つ息を吐いた。
クロード「…怪我をされなくて良かった…」
今叱られた声とは打って変わって、優しい声でクロードさんが呟き、微かに指が私の頬に触れた。
" ドキン…… ッ…"
触れたか触れないか位なのに、クロードさんのその優しい声と指先に、私の胸は音をたてる…。
クロード「さぁ、参りますよ。
ウィル様がお待ちです。」
まだ少し速い鼓動を抱えながら、私はクロードさんの後ろを付いて歩いた。
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案内された書庫には既にウィル王子が到着していた。
ユナ「…っわぁ!
凄い……!」
広い部屋の端から端まで背の高い本棚がずらっと並んでいる光景は、書庫と言うより、むしろ図書館と言った方がしっくりくる。
ウィル「……気に入った?」
ユナ「はいっ!
あっ!! …お待たせしましたっ!」
ウィル「クス…ッ…
ユナは元気だね?
俺も元気が出る…」
ウィル王子が笑顔を見せると、私の後ろでクロードさんが、
" ゴホンッ…"
、と、咳払いをした。
"" あ…落ち着いて、落ち着いて…!""
ユナ「あの…、今日からどうぞよろしくお願いします。」
ウィル「こちらこそ。
スケジュールがハードで大変だと思うけど、俺も出来るだけ協力するから…。
頑張って…?」
ユナ「はい!頑張ります!」
そう笑顔を見せると、ウィル王子もふわっと柔らかく微笑んだ。
ウィル「じゃあ、座って?」
奥のデスクに座る様促されそこへ向かう。
ウィル「クロードはもう下がってていい。
後は俺がするから。」
クロード「……宜しいのですか?」
ウィル「いいと言ってる。」
クロード「……かしこまりました…。
よろしくお願い致します。
では…また後ほど…。」
"" クロードさん行っちゃうんだ…
ウィル王子と2人きりって、、それはそれで緊張するんだけど… ""
ウィル王子は私の隣の椅子を引き、そこへ腰掛けた。
"" え…?!隣座るの?…""
ウィル「……ん?
どうした?」
そう言ってウィル王子が私の顔を覗き込む。
"" 近っ! 近いよっ! ""
ユナ「…あ、いえっ!
なんでも無いですっ!
スイマセンっ!」
ウィル「ユナは面白いね。
ホント…見てて飽きない」
ウィル王子がクスっと笑う。
"" うわ…天使みたい…
……いやいやっ!
勉強!勉強っ!!""
その後、ウィル王子は挿絵や写真の沢山入った本で、この国の歴史について分かりやすく教えてくれた。
元々歴史や国の成り立ちなどの分野が好きなのもあり、面白くて夢中になってしまった。
ウィル「……もうこんな時間か…。
そろそろ終わりにしようか。」
ユナ「あ、もうそんな時間ですか?
楽しくてあっという間でした。」
ウィル「ああ…、俺もあっという間だった…。
もっとユナと2人で居たいけど…」
ウィル王子の前髪がサラッと揺れる。
ユナ「え?…」
ウィル王子の発言に戸惑ってちょうど良い言葉が出でこない。
ユナ「え…と……。
……またまたぁっ!
ウィル王子ったら!
ビックリして勉強した事全部忘れちゃいますよ!」
そう言ってケラケラっと笑って見せた。
ウィル「いいよ…。
そしたらまた何度も俺が教えてあげる」
何て言って返したらいいのかわからず困っていると、扉をノックする音が響いた。
ユナ「あ!誰か来ましたよっ!
は、はーいっ!」
「失礼致します。」
ガチャンっ…と重そうなとびらが開き、クロードが現れた。
クロード「次のレッスンの時間が近付いて参りましたので、 そろそろご休憩されてはいかがかと…。
お茶とスイーツをご用意致しましたので、お部屋へどうぞ。」
ユナ「わぁ!
スイーツですか?!嬉しい!」
ウィル「俺はいらない。
執務室に行くから、後で紅茶だけ運んで…。」
無表情でクロードさんにそう告げると、1人で出口に向かって行ってしまう。
ユナ「あ! ウィル王子!
ありがとうございましたっ!」
ウィル「続きはまたね…」
そう言ってクルッとまた出口へむかい、ドアの外へと見えなくなった。
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部屋へ戻って一息つくと、まもなくクロードさんがケーキとティーセットを持ってやって来た。
ユナ「わぁぁ!いいにお〜い!!美味しそう!」
クロードの持つトレイの上から、甘い匂いがふわっと漂って来て、誘われる様にそこへ近づく。
その手元を覗き込むと、ラズベリーやブルーベリーや苺が沢山のったタルトがあった。
ユナ「かわいい〜!!
可愛いですね!?クロードさんっ!」
手元を覗き込んでいた視線をクロードさんに上げると、思いの外顔が近くにあってビックリした。
クロードさんも少し驚いた顔をして、お互いの動きが一瞬止まる。
先に動いたのはクロードさんで、スッと視線を外すと、テーブルにケーキをセットしながら言った。
クロード「美味しい匂いがしても覗き込まないっ。
わーわー騒がないっ。
これからは常にレッスンしてる気持ちでいて下さい?」
"" あ…、そうだった… ""
ユナ「ゴメンなさい…。」
"" 反省、反省… ""
クロード「……まぁ、個人的には、あなたのそういう反応は嫌いじゃありませんが…… 」
ユナ「……!!?」
"" えっ?!何っ?!""
クロード「それでは私は失礼致します。」
あまりにクロードさんらしからぬ発言に、ぽーっと去って行く後ろ姿を見つめていた。
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