王子様と執事

□スペンサー家の憂鬱
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パタパタパタパタっ…

「こらっ!」

「!キャッ!!」

ビックーーンッ…!

ビックリしてその場で固まる私…

ユナ「クッ…クロードさん…!」

恐る恐る顔だけ振り返ると、(いつもの様に)眉間にシワを寄せ厳しい顔で私を睨んでいる…

クロード「あなたっ…毎度毎度、何度言わせるんですかっ、
廊下を走るなっと言っているんです!
壁中に貼り紙でもしないと覚えられないんですかっ!
貴重な調度品など、転んで引っ掛けでもしたらどうするんですかっ!
万が一お客様などにその様なはしたない所を見られでもしたら、当家全体の恥になるのですよっ!
これ位の決まり事など、好い加減覚えなさいっ!」

ユナ「す…すみません…」

きつくお説教された子供の様に(まぁ、実際キツくお説教されてるんだけど…)ガックリと項垂れ、声も小さくなる…。

クロード「もうこれっきりにして下さいよ。
また同じ事何度も言わせないで下さい。
こんなに毎日同じ事を誰かに注意するのは生まれて初めてです。」

益々肩が下がる私…

ユナ「ハイ…肝に命じます…」

クロード「もうよろしいっ。
くれぐれもお気をつけ下さい!」

さっと踵を返し歩き出すクロードさんの相変わらずシワ一つないパリっとしたスマートな後ろ姿を目で追いつつ、

"はあっ…"

と大きな溜息を一つ突いた。



「またクロードに叱られた?」

背後から突然声を掛けられ、反射的にくるッと後ろを振り向いた。


ユナ「ウィル王子!」

クスクスっと笑って此方に近付いて来たのは、アパートが焼けて家なしになった私が少しの間お世話になっているこの国の王子だ。

ウィル「笑ってごめんね?笑い事じゃなかったよね?」

突然訪れたこんな私にも、いつも優しく声をかけてくれる。

ユナ「いえっ!
私が毎度学習しないで怒られてるのでっ!
笑われて当然というかっ、
むしろ笑ってくれたら有難いとでもいいますかっ… 」

シドロモドロになって慌てる私を見て、またウィル王子は

"プッ…!"

と小さく吹き出した。

ウィル王子「フフッ!
ゴメンね。
でもユナは楽しいね
見てて飽きないよ。
見える所にちょこんと置いておきたいくらいだ」

ユナ「っ!えええぇっ!
そっそんな滅相もないですっ!
わ、私なんか視界に入ってたら余りの落ち着きなさにグッタリしちゃいますよっ!
ししし仕事になりませんっ!」


たまにこんなトンデモ発言で私をからかうウィル王子。

ジョークだと解っていても、一国の王子であり、見目麗しいウィル王子に言われると、一々ドキッと反応してしまい心臓に悪い…。

ウィル「フフッ…
確かに仕事にならないのは本当かもね…?
ところで、またクロードに叱られるくらい、何を急いでいたの?」

ユナ「あっ!!そうだ!
ガーデナーのマルクが、一年に一日しか咲かない花が咲いたから見においでって誘って下さったんです!」

ウィル「ふーん、、マルクが…
ユナはマルクと仲が良いの?」

ユナ「……?
いえ… 特に仲が良いと言うわけではないですけど…
植木の事でアドバイスを頂いたりはしました。
それくらいです…」

ウィル王子の目元に少し柔らかさが戻る。

ウィル「そう…。
…じゃぁ、気を付けて行っておいで。」

ユナ「ハイッ!
ありがとうございます!
でわっ!」

ウィル「あっ、、、
焦らずゆっくりね?」

今にも駆け出しそうな私を見てウィル王子が優しく微笑んだ。

"やば…さっき怒られたばっかり…"

ユナ「…はい…
ゆっくり…ですよね!
では、、行って来ます!」

ウィル「クスッ…行ってらっしゃい」


ニコッと笑顔を返してウィル王子の横をすり抜けた。

その後姿が見えなくなるまで見つめるウィル王子だった…。


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