運命ワ廻ル

□桜の色は血の色
1ページ/2ページ


ある晴れた日 それは突然の出会い 運命が回りだした

白い影はニヤリと笑う

【さぁ― 楽しませてくれよ?】




1・桜の花びらは血の色


『もしもし?今日の講義くるの〜?』


友達と電話をしながら河原を歩いている一人の少女。いや、顔は幼いが「女性」と言った方が正しいかもしれない。

(この時期は河原の桜並木がきれいなんだよねぇ…)

彼女は桜を見上げながら、そう、地面には目もくれずに電話している。


『ちょっと?聞いてんの?』

「あぁ、ゴメンゴメン。そして行かないので、よろしくねっ!」


はぁと短いため息が電話口から聞こえるが、彼女は気にせず電話を切る。


「やっぱり、桜ってきれい… のわぁ!?!?」


何かに躓いたのか、あまり女性にしてはよろしくない声と同時に、べしゃっといい音がして地面に倒れこんだ。

しかし、いつまでも倒れてはいられず、うぅ〜と唸りながら、すりむいた手をさすりながら起き上る。


「いったぁ、何なのよ…って人?」


桜の木の下には、青い服?を着た男性らしき人が横たわっていた。

疑問形なのは、普段着にしては幾分かキッチリとした格好で、映画にでも出てきそうな服装だった為だ。

顔を覗き込むと、綺麗な黒髪の間から整った顔がうかがえる。

(うわ、綺麗な顔してる・・・)

思わず黒髪に触れようと手が伸びるが、小さなうめき声で手を引っ込める。


「?お兄さん?大丈夫ですか?」


心配になり揺すってみると、抑えていた手が滑り落ち、赤い液体が脇腹から出ているのがうかがえる。


「なにこれ…、血…??」


桜の木の下…

人…

血…

『桜の色は血の色』あの言い伝えの話が本当なのかと一瞬錯覚してしまった。


揺すった所為か、痛みでか、うっと唸った後ゆっくり目が開いた。


「あ、お兄さん大丈夫ですか…?酷いケガですけど…」


「君は…?・・・・・!?ココはどこだ!?うっ…」


「!動かない方がいいですよ!」


とりあえず、落ち着いて下さいと肩を押さえて座らせる。


「すまない、…状況を説明してくれるか?」


彼の言葉で、とりあえず状況を説明してみた。

まぁ、説明と言ってもそう話す事もないのだが…

桜を見上げて歩いていたら、何かに躓いて転んだこと、起き上ってみると、青い服のお兄さんが血を流して倒れていた事。

ただ、それだけなのだから。


「そうか…しかし、ここはいったい…テロリストを排除している最中のはずだったんだが…」


今、耳を疑う発言をキャッチしました。はい。テロリスト?


「あの、テロリストって…ここ日本ですよ?そんなのいるわけないじゃないですか。」

「ニホン…?ここはニホンと言うのか?」

(え、日本人じゃないの?まぁ、テロリストがどうこういっているし…)

ケガで頭がやられたのかとも思ったが、あまり嘘をついているような顔ではないので、とりあえず、外国人さんってことで一人納得してみた。


一人呟いていると、何をぶつぶつ言っているんだね、なんて言われた。
話し方もちょっと変わっているみたい。


「とりあえず!!」


急に、立ちあがって手を差し出した。

彼は頭の上にハテナを浮かべる。


「ここで話しててもしょうがないじゃないですか?ケガも酷いし、病院じゃ、テロリスト…?とか言ってるし、お兄さんどこの人か分からないから、とりあえず家に来てください。」


そう言って、彼女はへらっと笑った。


「(…可愛いな、)…しかし、迷惑かけるわけにも」

「はぁ、私がお兄さん発見した時点で遅いです。今更ですから。それに家もすぐそこなんで、いきましょ。」


そして、もう一度手を差し出すと、今度はしっかりと彼女の手を握った。


「ありがとう」

「いえ、ほっとけないんです。困ってる人」


そういって、笑顔を向けて、彼の手を引きながら帰路を辿る。


「・・・咲。」

「え?」

「咲・・・名前よ」


そう、手を引きながら先を行く彼女は言った。


「そうか、私は…ロイだ。よろしく、咲」


それだけが、彼女の家に着くまでに交わされた会話。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ