雷光の錬金術師
□プロローグ
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ドドドドドド…ババババッ…
銃声が鳴り響く戦場
絶えず流れる鮮明な血
ーーーイシュヴァール殲滅戦
「あぁ、ロイ。無事で良かった。」
「ウェルコット准将!?!?」
ロイは目を疑った。目の前にいる人物が血まみれだったからだ。
「そんな泣きそうな顔、すんじゃねぇよ…色男が台無し、だぜ?」
頭を撫でられるが、余計に涙腺が緩む。
「…ッ。とにかく止血をウェルコット准将…」
「いや、いい。この出血じゃ無理だ。」
そう言ってはにかんだ。
「ロイ、お前に頼みがある。最後の頼みだ、聞いてくんねぇか?」
から笑いをしながら、ウェルコットは写真を胸から取り出して、ブレスレットと共にロイに押し付ける。
「このブレスレットを、ミシェルに。あいつはきっと俺を追ってくる。その時は、娘を守ってくれ。それと……お前の、野望は叶、うよ、必ず。マスタング中佐」
「ウェルコット准将!?」
力なく幸せそうに目を開けないウェルコット。
俺は、大切な人一人すらも守れないのか。
ギリッと拳を握る。食い込むのではないかと思う程に。
苛立つのは自分の無力さにか、こんな戦争をしかけた軍にか、それともイシュヴァールの民にか。
理想とかけ離れたこの現実を受け止めきれないでいた。
「…早くこの無駄な戦争を終わらせよう。」
ポツリと誰にも聞こえないように呟いた。
この時、弱い自分は捨てたんだ。強くいなければならないと、言い聞かせて。
その後、ロイ・マスタング中佐、否「イシュヴァールの英雄」と呼ばれることになる。