長編(パロ)

□file,0 プロローグ
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「おい!大丈夫か?」

周りに居た子たちが子猫を蹴り上げようとした子に駆け寄ってそうたずねる。
一緒に遊びに出た友達なのだろう。

当たりはしなかったはずだ。
驚いて腰を抜かしただけ。
かなり大きな音だったし、隣で倒れたのだ。
それなりの風圧もあったはず。

「おう。当たったわけじゃないし、大丈夫」
「にしても危ねえな〜。真下にいたら大怪我じゃ済まないんじゃねぇ?」
「でも、この看板が倒れるなんてな〜。しっかりボルトで固定してあるぜ?」

小学生達はいきなり倒れた看板をしばらく点検しているようだったが

「もう行こうぜ」
「そうだな」

そう言って自転車で去って行った。
その子は、子猫どころか看板にも興味がなくなったらしい。




私は看板が倒れたままでは危ないと思い、看板の店に電話することにした。
看板は近くのショッピングセンターのものだ。
たまに私も利用するので、財布の中にあるポイントカードに電話番号が載っている。

携帯から「○○にあるお宅の看板倒れてますよ」とだけ告げ。
一方的に電話を切った。

後はショッピングセンターの人がなんとかするだろ。


“一仕事したな”と一息ついていたら、視線を感じた。
見回してみると虐められていた小さな黒い子猫が
私の足元でこっちを見上げている。


猫は好きだ。子猫も黒猫も。

しかし、その子猫にかまう気分ではなかった。

でもその凛とした姿に興味を惹かれた。


本当に綺麗な猫だった。真っ黒な全身に吸い込まれそうな黄色い目。
おとぎ話に出てくる魔女の使い魔のようだ。
……体は小さいけれど。

「危ないとこだったな」
そう言って、のどを撫で上げたが子猫の表情は変わらない。


どこか異質な者を見るような目、それでいて相手を慕うような目
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