長編(パロ)
□file 4-2 呪いの行方
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「どうなるんですかね」
「さあ?でもちゃんと話し合うように言ったからお母さんも含めて話合ってるんじゃないかな?」
「でも、お母さんは話すことは出来ないんですよ。
たぶん呪いで言葉を失っています。それ特有のサインがありました」
……そっか。
「やっぱりね。この家全体に禍々しい雰囲気を感じるけど、お母さんの周りが一番強かったもんな。
あの人から家全体に影響が出てるのかな?」
「分かったんですね。たぶんそうだと思います。
全く家から出て無いようですし。そのせいもあるでしょう。あまり強いものではないですよ」
「そうなの?」
「ええ。弱いところがなければかからなかったと思います。たぶん疑念が強かったんでしょうね。
気をしっかり持てていたら、こんなことにはなっていなかったでしょう」
それなら私の力でも、なんとかなるかな。
私たちは小声で情報交換を済ます。この距離なら周りの人に聞こえないくらいの声でも伝わるし。
「……どうする気ですか?今日話し合えと言ったからにはなにかするつもりですよな?」
「やっぱり分かっちゃうか」
私は鞄からある粉袋を取り出した。
「なんですか?それ?」
「ん?昨日作った薬」
呪文の効きを良くする薬。
上手くできているかは分からない。
いきなり人に使って上手くいかなかったらとも思うが、常日頃から呪文を使わない私がやる以上、薬の力も必要だと思った。
「昨日あんなに苦労して作ったものをこんな場面で使うんですか?呪いが解けるとも限らないんですよ!
呪いの方に効果が出てしまうかもしれないです」
「そうだよな……。上手くいくとは限らない。悪い方向に出るかも。
でも解けなくてもいいんだよ。少しの間だけでもお母さんの真意が聞けたら。その間だけでも、呪いを吹き飛ばす力が私にあるよう祈るだけだ。
梓が言ったように、お母さんが気を強く持てるようにみんなの本心が分かれば、きっと……そうなれるから」
そう言って粉を掌に出し、
『今この時より暁9つまでの間、この家にいる者は真実を語る。口に出せなかった真実。心の奥に隠したものを、聞くことになるだろう』
呪文を唱えながら家全体を包むように粉を降らせる。
呪文の効果を証明するように6つの光が天に向かって上がり、静かに消える。
光を見届けてから私は梓を抱いたまま、帰路に着くことにした。