長編(パロ)
□file,2 君の名は?
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今見ていた絵本に出て来る黒猫を小さくしたような子猫だった。
どこかで見たことある気がする。
でも思い出せない。
不思議に思いながらも可愛いもの好きの私はその猫に駆け寄った。
「どこから入ってきたんだ?野良猫か?
首輪はしてるけど、こんな所に飼い猫はいないだろ」
どこかで見たことのあるようなマークのあるチャームをつけた首輪をしていた。
慕うような目で私を見つめている。
この印象的な黄色い目どっかで見たような……。
「さっきの声どこから聞こえたか知らないか?
まさかお前じゃないだろうしな」
そう言いながら私は子猫の首を擦った。
すると……
「気持ちいい……」
……はい?
今喋った?この子喋ったよな!?
呆然としていたら、いかにも“しまった!!”という表情になる子猫。
時が止まったように、お互い顔を見合わせていた。
ウソだろ?
「見えない聞こえない見えない聞こえない見えない聞こえない!」
呟きながら目をギュッと閉じて、耳をふさいだ。
いきなり猫がしゃべり出すなんてありえない!
それでもおそるおそる、子猫を盗み見るようにうかがうと、
はっと気が付いたように駈け出そうとする子猫。
"逃がしたら後悔する。"
状況は掴めていないが、なぜかそう思い、
半ば無理やり抱き上げた。
かなりの抵抗を予想していたのだが、それほど抵抗されなかった。
爪を出すことも、威嚇することもない。