starry☆sky  短編

□星の心音
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カシャッ



聞き慣れたシャッター音が聞こえ、私の心は弾んだ。
音の聞こえた方に向かうと、やはり彼の姿。
真剣な表情で何かを写していて、こんな姿も好きだ…。
(ちょっとばかり妬いた時期もあるが、それは秘密だ。
趣味であるカメラに妬くなんてカッコ悪すぎる)

彼が一通り写し終わったのを確認し、待ってましたと言わんばかりの勢いで駆け寄った。



「哉太!今日は何を撮ってたの?」



「うぉ!
お前いつから居たんだよ!?」



「ちょっと前〜」



「なんで声かけねぇんだよ…」



「カメラを構えてる哉太が好きだから。」



直球でかましてやる。
と、彼がみるみるうちに赤くなる。



「ばっ、バカ何言ってんだよ!」



「バカで結構ぉ。
だって、自分の彼氏のこと好きって言って、何が悪いのさぁ」



「だ、だからお前っー!」



余計に赤くなる彼。
くくっ面白い。
笑いをこらえようと下を向いた時だった。
私の視界の端に、マーガレットの咲いた花壇が飛び込んだ。
さっき哉太がカメラを向けていたあたりだ。



「もしかして、これ撮ってたの?」



「ん、あぁ。」



「………」



「何だよ?」



「乙女だね。」



「は、はぁ!?
花に乙女も何もねぇだろ!?」



「かわいいじゃん!
ねぇ、撮った写真見せて!」



哉太の持っていたカメラに手を伸ばす。



「嫌だ」



と、私の手の届かないところまで掲げられた。



「あ!意地悪!
いいじゃん、ちょっとくらい!」



諦めずに手を伸ばす私。
ただでさえ身長差があるのに届くはずないのだが、ギリギリまで背伸びして食らいつく。

すると、いきなり足が滑った。
下が芝生なのを忘れていた。
私の体はどんどん前のめりになり、思わず目を閉じた。



ドシッ



地面に体が打ちつけられる音がする。
が、不思議と痛みは感じない。



「え………?」



恐る恐る目を開けると、そこには吐息がかかるくらいの距離で哉太がいた。



「哉…太?」



どうやら私を支えてくれたらしい。
哉太が尻餅をつき、私がその上に乗っている状態だった。



「大丈夫か?」



「う、うん!ありがと!」



あまりの近さに、反射で起き上が……ろうとした。
が、私としたことが、慌てすぎて又も芝生に足を取られた。



「ぅわ!」



ぎゅぅぅ



今度は私が哉太の胸に倒れ込み、しっかりとしがみついてしまう。



「び、ビックリした…」



「ビックリしたのは俺だ!
なんで二回も転ぶんだよ!?」



呟くと全力で言い返された。
全く持って返す言葉がありません。
自分でも呆れる。



「ごめんなさい…」



謝ると、本当に自分の声なのかと疑うくらい、落ち込んだ声が出た。
自然と視線が落ちる。
だって今の哉太、ちょっと怖かった。
半分本気だった。



「呆れた…?」



高校2年にもなって、みっともないくらいはしゃいで、みっともないくらい転けて、挙げ句の果てに彼氏の上に倒れかかった。
呆れられて当然だ。
こんなのが彼女で、とか……一瞬でも思われたかな…?
哉太の気持ちが知りたくて、恐る恐る顔を上げる。



「はぁ?
こんだけ一緒にいて、今更呆れることなんかねぇだろぉが」



と、視線が合うなりそう言われた。

気づいてる?
それ、私からしてみればスッゴく嬉しい言葉なんだけど。
…いや、気づかずに素で言ってくれるから嬉しいのかな?



ぎゅぅぅ



お礼に彼の胸に抱きつく。



「え!?おぃー!?」



「ありがとう…。
大好き………。」



大好き。
本気に。
甘い愛の言葉なんかなくったって。
ロマンチックなキスがなくったって。
君の隣が好き。
君とのこの時間が好き。



「あぁ、俺も…」




思ってもみなかった返事だった。
目を見開くと、優しく優しく抱き寄せられた。



哉太の音。



彼の心音が聞こえる。
緊張してるでしょ?
って、それは私もか。
彼の背中に腕を回し、強く抱きつく。
お互いに、お互いの心音が伝わるように。



やっぱり前言撤回。
愛の言葉って必要。
そのかわり上手くなくたっていいよ。
気持ちが伝われば十分。
今みたいに。ね?













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