感情的少女

□9.自暴自棄
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拓斗side


美緒ちゃんはあれから4日間、目を覚ましていない。


さくらちゃんの主治医の先生曰く、さくらちゃんは精神的に酷くストレスを抱えていて心と脳が目を覚ましたくないと思っている、そして脳震盪と出血が酷かったからなおさら目が覚めない環境にあるらしい。


美緒の知り合いだと先生に伝えたら美緒ちゃんを見ていてくれって頼まれた。いつ目覚めるか分からない。俺だって正直不安だよ、このまま美緒ちゃんが目を覚まさなかったらどうしよう、ってそんな不安が俺の心を飲み込んでいく。


「ごめんね、美緒ちゃん・・・美緒ちゃんは何も悪くないんだよ・・・・けど、分かって?瑞季もきっと心のどこかではこんな事望んでいないはずなんだ・・・ごめんね」


虚しい。その感情が俺の頭を駆け巡る。
美緒ちゃん、早く目を覚まして、君を救う覚悟ならできてるから。


「・・・・・・・」


美緒ちゃんは何も答えずに眠っている。・・・・そうだよな、話しかけただけで目が覚めるだなんて漫画でもありえない。



ただ、美緒ちゃんをこうなるまで救えなかった怒りと
美緒ちゃんを守れなかった悲しみと
瑞季に対する恨みなどの感情が俺の中でぶつかり合った。


その感情を押し付けるかのように、美緒ちゃんの唇を自分の唇で塞いだ。


自分の目から頬を伝い美緒ちゃんの頬に流れていく涙。


あれ?俺・・・・泣いてる・・・?


唇を離すと美緒ちゃんは微かに微笑んでいた。


「美緒さんは誰かの温もりを求めています。美緒さんが眠っているときも見ているだけでなく頭を撫でたり手を握ってあげるなどしてあげてください」


美緒の主治医の言葉が脳裏をよぎる。


「誰かの温もり・・・・か」


美緒ちゃんはきっと優君の温もりを求めているんだろうな。




・・・俺、涙の理由分かったよ。


美緒ちゃんが好きなんだ。なのに守れなくて、悔しくて、自分が情けなくて。好きな女の子すら守れない僕を美緒ちゃんは必要としてくれるのか・・・?






けど、今はそんなこと言ってられない。



美緒ちゃんが目を覚ましたら、自分に出来ることを尽くして美緒ちゃんを守る。


俺に出来ることはそれくらいだ。だからこそ必死にならないといけないんだ。


”誰かを守る”ってそういうことなんだ。




美緒ちゃんの小さく白い手を握り締めた。


ピクッ


「・・・美緒ちゃん・・・!?」


美緒ちゃんの指が微かに動いた。


「んっ・・・」


「美緒ちゃん!」


「っ・・・・・拓斗・・・せんぱ・・い・・・・?」


消えそうな声で俺の名前を紡ぐ美緒ちゃん。


「待ってね、今先生呼んでくるから」


バタンッ


美緒ちゃんの頬に残っていた俺の涙の後。


けど、なんだか本当に美緒ちゃんが泣いていたように見えた。幻覚なのか・・・?


先生を呼んで急いで美緒の病室に戻った。生憎重い喘息を抱えているため、走ることはできない。


美緒ちゃんの病室に戻ってドアを開けると飛び込んできた光景は、


「美緒ちゃん!!」


「せ・・・んぱ・・いっ・・・」

手首から血を大量に流して涙をこぼしていた美緒ちゃんだった。
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