黒鉄

□いつか君と果たす約束
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 俺はまだ闘える―――。 シドウは、そう自分に言い聞かせる。
 日常生活では支障がない―――医者にも保健医にも散々言われた。 剣道なんてやめてしまえ、と。 冗談じゃない。 竹刀が振れなければ剣士じゃない。 俺は剣士なのだ。 例え片手でも剣を振ってみせる。 そんな思いがクロガネとの出会いで再燃した。 一度は諦めた剣道の道を。 だから―――クロガネには、そんな心配そうな目で見られたくないのだ。 これは、意地だ。 間違ってもライバルにだけは背中を見せられない。 それが剣士の性なのだ。 だからこそ今でも剣道を続けていられると言っても過言じゃない。
「次は、俺が勝つ」
 シドウは、振り向き様のクロガネに堂々と宣言した。
「僕も負けないから」
 クロガネは、それを満面の笑顔で返す。
 そんな二人の約束が果たされる日もそう遠くではない様だ。






〈了〉
(20120322)
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