夜空
□特別になりたい
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「よーだーかーさーん」
空は、元気良くぶんぶんと手を振って夜鷹の後を追ってきた。
「何だい、大狼」
日本全国の女性ファンを悩殺する笑顔で空のそれに返す。
「今日は、夜鷹さんの誕生日だからプレゼントを持ってきました!!」
と言って、空が差し出したのは、毛糸のマフラーだった。
「ありがとう」
夜鷹は、空からプレゼントを受け取った。
「手編みじゃなくて申し訳ないけど―――」
そう言った空は、本当に申し訳なさそうだ。
「構わないよ」
夜鷹は、早速マフラーを首に巻いた。
「はぁー良かった! 気に入って貰えなかったらどうしょうかと思ってました」
夜鷹の誕生日を祝おうとしているのは、空だけじゃなかった。 毎年(因みに、夜鷹の誕生日は四年に一度だが)夜鷹の誕生日には、女子は勿論、夜鷹を慕う男子諸氏に至るまで、数えたらキリがない。 その中で自分が夜鷹の特別になるのは、かなりのハードルだ。 判っていた。 それでも自分は、夜鷹の特別になりたいと思った。 おこがましいけれど。
「ありがとう、大切にするよ」
何度、夜鷹が言ったであろう社交辞令の言葉だが、空には嬉しかった。
(―――夜鷹さんの言葉が全てだから)
「はい!」
〈了〉
(20120406)