黒鉄

□長い夏休み
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 二人で旅行しないかと誘ったのは、シドウ。
「どこに行くの!?」
 僕は、オウム返しに聞いた。
「なるべく遠くがいいな。 東京から離れてみたい」
 東京の街は、喧騒が煩いから、シドウは言った。
 そろそろ僕達も夏休みと言う事で気もそぞろだ。
「そうだね」
 剣道一筋のシドウが旅行なんて、正直驚いた。
「旅館の予約も全部俺がしておいた」
 シドウは、家計を助ける為、新聞配達のアルバイトをしているのだが、その月給で旅館を手配してくれたのだ。 バカだよシドウ、僕は旅行なんて良いのに。
「どうした、クロガネ!?」
「どうしてシドウは僕を旅行なんかに誘ったの!?」
「どうしてって、学生旅行ってフツーじゃないのか」
「あ」
 僕は、そのしごく当たり前の事にハッと息を呑んだ。 そして、赤面した。 恥ずかしい。
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