黒鉄

□お見舞い
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「出来たぞ、クロガネ」
 言いながらシドウは、お粥と味噌汁を乗せたお盆をヒロトに渡した。
「ありがとう、シドウ」
 ヒロトは、それをうやうやしく受け取る。
 ヒロトが風邪をこじらせたという話を聞いたので、学校帰りにヒロトの自宅にお邪魔したシドウだったが、ヒロト本人は思ったより元気そうだったので、シドウは少し安堵した。
「いいか、ちゃんと暖かい格好して休んでろよ」
「うん」
 シドウがこんなにマメなのは、何でも父と妹と三人で暮らしている所為かバイトの他にも家事もこなしている訳で―――。 シドウにとってそれは当たり前の事だった。
「クロガネ、熱いからヤケドするぞ」
 ヒロトがお粥を口にする瞬間、シドウはヒロトに注意する。
「でも、美味しいよ、このお粥」
 ヒロトはそれを味わう様に咀嚼する。
「なら良かった」
 ヒロトが喜んでくれる事実が何より嬉しかった。 家族以外の人間に気を許すのはヒロトが初めてだった。
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