Main(携帯用)

□開かずの扉
2ページ/4ページ


「よぉ、生きてるかぁ」
「…何しに来やがった」
「具合悪いくせにベスターを出しっぱなしにしてんじゃねぇ。炎の無駄だろうが」


未だ消えない猛獣は、ベッドの傍らにて眼光鋭く待機している。


「飯はちゃんと食ったのか?」
「…いらねぇ」
「薬は」
「…知らん」
「ゔお゙ぉい!てめー!治す気あんのか!」


寝てれば治ると顔を背けた息遣いがいつもより荒い。
ボタンが数個外された胸元や首筋にはうっすらと汗が滲む。
熱がある…スクアーロが革手袋を外し額に手を当てると、ひやりとした感触が予想外に心地良かったのか、渇いた吐息が苦しげに洩れた。


「なぁ、ちゃんと医者に診てもらおうぜぇ」
「必要ない」
「でもよぉ」
「お前も存在がやかましい。さっさと失せろ」


瀕死の状態でも悪態をつく男だ、吐かれた言葉を鵜呑みにする事は出来ない。
それでも他人のぬくもりなど縁のない、今後も欲する事など有り得ないだろう男が身体を休ませるには、他人の気配など邪魔にしかならないのも理解出来る。




ここは大人しく引き下がるか…。




ほとぼりの冷めた頃にでもまた顔を出せばいいかと額から手を離し、腰掛けていたベッドから立ち上がってみれば、足元には降り積もったばかりの雪のように真っ白な毛並みの炎の化身。


「…ゔお゙ぉ?」
「チッ…俺の言った事が聞こえなかったのか」
「いやだっておめぇ…これじゃ…」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ